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コオロギの「へそ」、ニワトリの「へそ」
 └─2014/06/27

 都立動物園水族園4園では、2013年12月22日から2014年4月13日まで、鳥の卵をテーマに各園を巡回する企画展「たまごのあいうえお」を開催しました。

 これにあわせて多摩動物公園昆虫園では、卵の殻を溶かして中が見えるようにして、生きている昆虫の胚(孵化前の発育段階)を観察するイベントを実施しました。

 昆虫の卵の中は卵黄で満たされており、この卵黄は胚が発育するための栄養源となります。孵化するまでに卵黄は胚の背中側から吸収されます。これは、昆虫では神経系がお腹側に、消化管が背中側に配置されているためです。

 一方脊椎動物では、消化管がお腹側に、神経系が背中側に配置されているので、お腹側から卵黄が吸収されます。孵化直前のニワトリのお腹には、卵黄が吸収されたあとが「へそ」として観察できます。

 このように昆虫と脊椎動物とでは器官の配置が逆転しているのですが、これは同じ遺伝子が進化の過程で違う使われ方をするようになったため生じることが最近の研究で分かってきました。つまり、昆虫と脊椎動物は共通先祖であるウルバイラテリアから分かれたのであり、受け継いだ遺伝子が昆虫では背中側で、脊椎動物ではお腹側で働くため、内臓の配置も逆転すると考えられています。

 一見すると姿かたちの違う昆虫と脊椎動物が、共通の先祖から進化したことが胚の研究から分かるというのは、とても面白いと思います。

写真上:腹側から見たコオロギの胚、脚とお腹の節が見える
写真中:背側から見ると卵黄を背中から吸収しているのが分かる
写真下:孵化直前のニワトリのお腹にある「へそ」

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 田畑邦衛〕

(2014年06月27日)



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