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トウワタをめぐる勘違い
 └─2013/05/10

 多摩動物公園昆虫生態園の大温室にはトウワタという植物が植えられています。ここにアサギマダラが産卵するのですが、トウワタは本来アサギマダラの幼虫が食べる植物(食草)ではありません。実際、孵化した幼虫はトウワタを食べると死んでしまいます。なぜここに産卵するのかわかりませんが、飼育係は毎日、アサギマダラの卵をトウワタの葉から指ではがして回収しています。

 ある日、そのトウワタにツマムラサキマダラの終令幼虫を見つけました。近くに本来の餌のガジュマルがあるので、ガジュマルで育った幼虫が蛹になる場所を求めてトウワタにたどり着いたものと考えていました。その後も、ツマムラサキマダラの幼虫を見つけるたびに採取し、担当者に「逃げて来たよ」と言って渡していましたのですが、よく見ると小さい幼虫もいるし、卵も見つかります。どうやらトウワタを食べているようです。

 多摩動物公園のツマムラサキマダラは、ガジュマル、ベンジャミン、キョウチクトウに産卵し、幼虫はそこで育ちます。ツマムラサキマダラがトウワタで育った記録はなかったと記憶しています。しかもアサギマダラの幼虫が死ぬ植物なのだから、トウワタではどんなチョウの幼虫も死んでしまうと早合点していました。しかし、ツマムラサキマダラはトウワタの上で生きています。そこで、幼虫をトウワタで育ててみたところ、無事に羽化しました。

 ツマムラサキマダラがふだん食べるキョウチクトウには強い毒があります。だから、トウワタを食べてもへっちゃらなんだろう──安易にそう考えたものの、調べてみるとそうではありませんでした。そもそもトウワタはカバマダラの食草として知られており、ツマムラサキマダラが食草として利用することがわかりました。大いなる勘違いでした。

写真:トウワタについたツマムラサキマダラの幼虫

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係3班〕

(2013年05月10日)



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