九州の福岡市動物園で2012年10月1日に新オランウータン舎がオープンします。これにともない、多摩動物公園で預かっていたボルネオオランウータンのメス「ユキ」を9月12日、福岡に移動しました。当日ユキがうまく輸送箱に入るよう、数日前から練習をしていました。その甲斐あってか、担当者を困らせることなくスムーズに輸送箱に入ったものの、扉を閉めたとたん、箱が揺れるほど暴れ始めました。一瞬ヒヤっとしましたが、箱を車に載せるころには落ち着きました。空輸でその日の夕方には無事に福岡市動物園に到着したとの連絡を受け、一安心しました。
私がユキと初めて出会ったのは、オランウータン担当になった3年前でした。そのときの印象は、体が大きく、眉毛が長く、ハッキリとした顔をしているなというものでした。また、日常の動きや担当者に接するときの態度などから、どこか気品さえも感じました。
飼育している9頭のオランウータンのうち、ユキと一番の仲よしは12歳のメス「キキ」でした。互いに体をからませるレスリングのような遊びもよく見られ、スカイウォークも一緒に渡りました。体の大きなユキのスカイウォークはとてもダイナミックでした。また、キキが子どもからおとなに成長していくときには、精神的な部分でも助けていたように感じました。
ユキにとって、多摩でくらした4年7か月には、どんな思い出が残ったでしょうか。長寿だったモリー(2011年4月死亡)やジプシーとは、どんな話をしていたのでしょう。長生きの秘訣でも聞いていたのかもしれません。ユキがいなくなった後、キキがなにかを感じているのかもしれません。
福岡でも多摩にいたときと同様、気品にあふれた姿を来園者に見せてほしいと願っています。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 島原直樹〕
(2012年09月21日)
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