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青い宝石、クロイトトンボ
 └─2012/06/22

 多摩動物公園昆虫生態園の一角を占める水辺に、クロイトトンボという小さなトンボがくらしています。ちょっと見ただけでは見逃してしまうくらい小さいトンボですが、水面に浮いている水草の辺りをじっくり観察すればきっと見つけられるはずです。

 体長は3センチくらいで、名前のとおり糸のように細くて華奢な体つきをしています。体色は黒が基調ですが、とくに目を引くのはオスの尾の先端にある2本の青いライン。黒とのコントラストによって、青の美しさが一層際立ち輝いているようです。

 彼らが飛ぶと、そのようすは青く光る小さな宝石が空中を滑っているように見えます。

 尾だけでなく胸部もなかなか綺麗な青色をしています。ただしこの色、じつは時間の経過によって変わっていくのです。羽化してすぐのころは黄色ですが、成熟すると青色に変わり、さらに時間が経つと粉をふいたようになります。

 いくつかのトンボのなかまにもあてはまることですが、クロイトトンボにもちょっと面白い習性があるといわれています。羽化してすぐの成虫は、一度水辺を離れて近くの草地や林でくらし、成熟すると水辺に戻ってくるそうなのです。生態園の水辺で見かけるのも、青く成熟した個体がほとんど。きっと、野外と同じように若い成虫は水辺から離れたところでくらしているはずです。

 しかし、今までのところ生態園では水辺以外でクロイトトンボを見かけたことがほとんどありません。若い成虫はいったいどこに潜んでいるのでしょう。なんとも気になることではないですか?

 昆虫生態園では、クロイトトンボの成虫は5月中旬から秋ごろにかけて見られます。生態園へお越しの際は、ぜひ彼らの姿を探してみてください!

写真上:藻に止まるオスのクロイトトンボ
写真下:交尾中のオス(上)とメス(下)

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 草野啓一〕

(2012年06月22日) 



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