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	      日本にすんでいるモグラのなかま(食虫目)には、姿や形、生活の場所など、さまざまな種類が知られています。そこで、多摩動物公園「モグラのいえ」の住人たちの顔ぶれをご紹介しましょう。 
 
 食虫目はモグラ科とトガリネズミ科にわけられます。モグラ科のうち、モグラのいえの住人は、アズマモグラ、コウベモグラ、ヒミズの3種類です。モグラ科は北海道を除く日本全国にすんでいます。 
 
 アズマモグラとコウベモグラは、モグラの特徴として誰もが思い描くとおり、地下にトンネルを掘ってくらしています。アズマモグラはかつては本州、四国、九州にすんでいましたが、大陸から渡ってきた体が大きく力も強いコウベモグラに生息地を奪われました。今ではアズマモグラの大部分が箱根山地より東北部に生息し、コウベモグラは箱根山地より南西部に生息しています。ただしアズマモグラでも、高地や紀伊半島など、逃げ場のない環境では孤立して南西部に生き残っているものもいます。どちらも餌はミミズが大好物です。 
 
 ヒミズは漢字で書くと「日見不」と書きますが、モグラより地上に近い半地下にすんでいます。落ち葉などの下に天井の開いたトンネルを作ってくらしているので、「日を見ることがない」というのは正確ではないかもしれません。 
 
 トガリネズミ科の住人は、チビトガリネズミ(亜種名トウキョウトガリネズミ)、オオアシトガリネズミ、ジネズミ、カワネズミの4種類です。ネズミのなかま(齧歯目)と思われがちですが、ネズミ類より鼻先が尖っていて、その鼻をよく動かしながら匂いを嗅ぐ姿を見ることができます。 
 
 チビトガリネズミとオオアシトガリネズミは北海道にすんでいます。チビトガリネズミは世界最小の哺乳類で、体重は2グラムしかありません。絶滅危惧種に指定されています。オオアシトガリネズミは体重が約12グラム、北海道にすむトガリネズミ4種類の中で最大種です。ふつうに見られる種類ですが、ストレスに弱く、チビトガリネズミより飼育が難しいと感じています。 
 
 ジネズミは本州、四国、九州に分布し、外形はトガリネズミに似ていますが、大きな耳が目立ちます。物陰に隠れていることが多く、展示に苦労しています。 
 
 カワネズミは本州、九州の渓流でくらし、泳いで魚を捕まえます。モグラのいえでは一番新しい住人で、2010年2月から展示を始めました。展示が最後になってしまったのは、捕獲や飼育が難しかったからです。カワネズミについては、東京動物園友の会の会員誌「どうぶつと動物園」2010年秋号にも書きましたので、機会があったらごらんください。 
 
 日本産食虫類は、その生活型からモグラ型、ヒミズ型、トガリネズミ型、ジネズミ型、カワネズミ型の5つに分けられますが、モグラのいえにはこれら5つすべてがそろいました。ぜひ食虫目の住人に会いに来て、生活型の違いなどを比べてみてください。 
 
写真上から: 
 アズマモグラ 
 コウベモグラ 
 トウキョウトガリネズミ 
 オオアシトガリネズミ 
 カワネズミ 
 
〔多摩動物公園南園飼育展示係 菊地文一〕 
 
(2011年01月21日) 
 
                        
  
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