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都会の夜を飛ぶコウモリの展示を始めました
 └─2010/10/22

 2010年8月から、多摩動物公園のアジア園カワウソ舎でアブラコウモリとヒナコウモリの展示を始めました。いずれも昆虫を餌にするコウモリです。
 アブラコウモリは2008年7月に八王子市で、ヒナコウモリは2007年11月に台東区で保護されました。それ以来バックヤードで飼育していましたが、いろいろな条件が整ったので、展示することにしました。

 果物を主食とする大型のコウモリを飼育している動物園は多いのですが、昆虫食の小型コウモリを飼育展示している動物園は数えるほどしかありません。関東では、私の知る限り上野動物園と京急油壺マリンパークくらいでしょうか。

 都会の夜を飛ぶといっても、コウモリなんて見たことないよという方も多いかと思いますが、夏の夕暮れどきに、川や池の回り、街灯の回りでひらひらと飛んでいる動物を見たことはありませんか? 鳥やガ、セミと間違う方も多いのですが、東京の場合ほぼアブラコウモリと思って間違いないでしょう。急に方向転換するのが特徴的な動きです。餌となる虫を追いかけて、自由自在に飛び回ります。

 ちょっと怖いという方もいますが、大量の虫を食べてくれるので人間にとっては益獣でもあります。血を吸うことはありませんのでご安心ください。 夜行性のため、昼間はじっと寝ておりほとんど動きませんが、間近で見るめったにないチャンスです。ぜひ多摩動物公園のカワウソ舎にお立ち寄り下さい。
 都内のコウモリのほとんどはアブラコウモリですが、ヒナコウモリは東北地方で多く見られます。夏の子育てが終わると、南下して東京や関西で越冬するそうですが、詳しい生態はわかっていません。東京でもアブラコウモリに混じって飛んでいるかもしれません。
 2010年9月には、国際連合環境計画が「国際コウモリ年」開始を発表しました。小さな動物で、あまり注目を浴びないコウモリですが、昆虫を食べたり、熱帯雨林の維持に役立ったり、生態系の中で果たす役割は小さくありません。生息地や生息数が減少する傾向にある中で、国際的にコウモリにへの関心を集めるための活動です。今回の展示で、当園がその一翼を担えればと思っています。
 ところで、なぜカワウソ舎でコウモリ? と思われた方も多いかもしれませんが、それは展示の都合上、ちょうどよい場所がカワウソ舎だったためです。深い意味はありません。

写真上:展示ケースの外観
写真中:細いすきまに入っているアブラコウモリ
写真下:ケースの内部、餌のミールワームと水鉢。

「国際コウモリ年」の記事(AFP通信)

〔多摩動物公園南園飼育展示係 大橋直哉〕

(2010年10月22日)



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