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クロトキの不思議な卵
 └─2010/05/07

 2010年4月21日、多摩動物公園ウォークインバードケージの東ケージで抱卵中のクロトキの卵を採取しました。巣は2つあり、1つの巣には2つ、もう一方の巣には1つの卵がありました。

 前者2つの卵は、いつもの見慣れた大きさでしたが、単独の卵は通常のクロトキの卵の 1.5倍ほどの大きさでした。確かにクロトキが抱いていたので、クロトキの卵に間違いはないと思うのですが、なぜ、こんな大きさの卵なのか?不思議に思っていました。

 育雛舎で有精卵か無精卵かを確認したところ、通常の 1.5倍ある大きな卵の中身はスカスカで、卵が腐ってしまったときの状態に似ていました。

 さて、腐っていると判断されたクロトキの大きな卵。大きさが普通のものとちがうので、割ってみることにしました。腐敗している卵を割ると破裂し、臭いもくさいので、なるべく近づかず、卵を地面の上に置き、木の枝先でおそるおそるたたきました。カチッと卵に枝があたり割れたのですが、予想に反し、臭いも破裂もしません。

 割れた卵をのぞいてみると……、思わず「ナニコレ?」と言ってしまうような状況、卵の中に卵があったのです(写真上)。

 ニワトリの卵では、このクロトキのような卵のことを二重卵(卵中卵)というそうで、完全な卵が卵の中に入っていることもあるそうです。

 今回のクロトキの卵の中にあった卵は、殻はなく卵膜のみで、黄味もありませんでした(無黄卵、写真下)。無黄卵は卵黄の代わりに卵巣や卵管由来の組織小片が中心にあることがあり、クロトキの無黄卵にもそれらしいものがありました。

 卵中卵のできる仕組みはよくわかっていないようですが、クロトキたちのくらすケージの中を人が通り抜けるという状況が、何かしらのストレスを与えていたのでしょうか?

〔多摩動物公園南園飼育展示係 土屋泉〕

(2010年05月07日)



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