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いそうろうのコシベニペリカン
 └─2009/12/17

 多摩動物公園アフリカ園の真ん中にあるサバンナ放飼場には、キリン、シマウマ、オリックスなどの草食獣の他、ダチョウやペリカン、シュバシコウといった鳥類もいっしょに生活しています。

 ペリカンたち(モモイロペリカンとコシベニペリカンの2種類)は、ふだんは集まって餌を食べたり休息したりして、多くの時間をペリカン池付近で過ごしています。

 ところが、2009年10月なかばのある日を境に、コシベニペリカンの「緑」がペリカン池とは反対側にあるシュバシコウ池にいつくようになってしまいました(個体識別用に足につけるカラーリングが緑色なので「緑」と呼んでいます)。

 じつはこれには理由があります。自然に恵まれた多摩動物公園には、タヌキなどの野生動物もたくさん出没し、陽が暮れるとサバンナ近辺にも現れるようです。

 ある日の夜、そんな野生動物がペリカンたちを襲ったらしく、翌日の朝発見したときには、「緑」の尾羽が数本抜け、少しおびえているようでした。ひどく怖い思いをして「トラウマ」になっているかもしれない……。ペリカンのトラウマの記憶はどれくらい続くのだろう……。

 当初は1週間かそこらで他のペリカンたちのところに戻るだろうと思っていた私は、そんなのん気なことを考えながら日々観察していました。ところが、それからすでに約2か月が経過。「緑」は今ではすっかりシュバシコウ池の住人となってしまいました。

 シュバシコウ池の水深はペリカンにとってはやや浅いと思われるのですが、シュバシコウが遠慮気味なので、「緑」は採食時も他の鳥たちに押しのけられることなく、真っ先に餌を食べることができて居心地がいいのかもしれません。

 しかし、そろそろ繁殖シーズンに向けての準備が始まります。ペリカンたちはなかまの中から相手を見つけ、私たち飼育係は巣台など環境を整えていかねばなりません。1羽だけ離れた状態でいるのをそのままにしておいてはいけないと思い、「緑」をペリカン池のなかまの方に行かせようと追ってみたりもしましたが、やっぱり戻ってしまいました。こればっかりは、自分の意思で行ってもらわないとどうしようもありません。

 「緑」が一日でも早く、なかまのペリカンたちのところに戻ってくれることを、シュバシコウともども願いながら見守っています。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 高原由妃〕

(2009年12月17日)



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