7月7日の七夕には、願い事を書いた短冊を竹に飾りつける風習があります。そこで、多摩動物公園のチンパンジーにも七夕飾りをプレゼントすることにしました。
七夕の日の朝早く、動物園の裏山で竹をとり、長さ5メートルほどの長い竹3本にリンゴやオレンジなどを吊して七夕飾りとし、放飼場の中に設置しました。長い竹は見ばえがよく、見た目も立派な仕上がりになりました。
放飼場に出たチンパンジーたちは、すぐに七夕飾りに気づいて大騒ぎ。葉っぱを引っ張ったり、吊るされている果物を食べたりしていましたが、しばらくするとバキバキッという音が……。果物を食べ終わったチンパンジーが竹にぶらさがり、途中から折ってしまったのです。竹は直径約5センチもありましたが、チンパンジーの力にはひとたまりもなく、あっという間にバラバラになってしまいました。
1時間かけて作った七夕飾り──その寿命はたったの10分ほどでした。しかし、飾りとしての役目が終わった後も、チンパンジーたちはバラバラになった竹を引っ張って遊んだり、体のまわりに集めてベッドを作ったり、人工アリ塚(中に餌が入っている給餌器)から餌を取り出す道具として利用したり、思い思いの方法で七夕を楽しんでくれたようでした。
七夕飾りがあっという間に壊されてしまったのは少し残念でしたが、いとも簡単に太い竹を折ってしまうそのパワーと、折った竹をさまざまな道具として使用する行動に、チンパンジー飼育経験の浅い私はとても驚きました。
また、ふだん見慣れない大きな竹を手に入れ、興奮しながら遊んでいる彼らを見ていると、こちらまでいっしょに遊びたくなってしまうほどでした。この感動を忘れず、これからもチンパンジーが喜ぶ道具やプレゼントを考えていくつもりです。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 東川上 純〕
(2009年07月31日)
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