残暑厳しいこの季節、冷房のきいた館内で快適に魚たちを見終えたあと、ガラスドームから一歩外に踏み出ると、もわーっとした空気と強い日差しに包まれます。そんな雰囲気でも、「水辺の自然」エリア通っていただくと、その暑さを心地よく感じることができるかもしれません。
エリア最初の橋の上から、紫色のミソハギの花が目に止まります。来園者から「あら、ミソハギよ」という声があがるとおり、このエリアで見られる草木の中で名前を呼ばれるものの代表格です。日本全国に分布し、山野の湿りけのある場所に生えています。田んぼの畦などでも見られるようですが、多分、自然に生えている姿よりも切り花として見覚えのある方が多いことと思います。7月から8月にかけて花を咲かせ、お盆のときに仏壇やお墓に供えられる花として広く用いられているからです。盆花(ぼんばな)、盆草(ぼんぐさ)、精霊花(しょうりょうばな)など、お盆にちなんだ呼び名でも知られています。
ミソハギの名は漢字で「禊萩」(みそぎはぎ)と書き、祭事や神事で“みそぎに使われる萩に似た花”という意味があるようです。また、生薬として下痢止めや切り傷の止血などにも利用されていることからも、古くから人と深い関わりを持つ草木であることがうかがえます。
そんなことを思いながら、橋の上からミソハギの花を見ていると、ひっきりなしに虫たち(昆虫)が寄ってくることに気が付きます。花の蜜に誘われてやってくるのでしょう。ミソハギは昆虫に蜜を与える代わりに、花粉をおしべからめしべに運んでもらっているのです。セセリチョウやハチのなかまがよく見られますが、集まってくる昆虫に注目してみるのもおもしろいですね。
今日も暑い日差しの中、足を止めてミソハギをながめる来園者の方々がいらっしゃいました。盆花として、とくにご年配の方の注目を集めていましたが、これからもミソハギが多くの人の心に留まる花であってほしいものです。
写真上:「水辺の自然」エリアに咲くミソハギ
写真中:ミソハギにとまるイチモンジセセリ
写真下:「水辺の自然」エリア案内図
〔葛西臨海水族園飼育展示係 金原功〕
(2010年08月27日)
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