オニバスは、スイレン科の浮葉植物で、葉の直径が2メートル以上にもなります。本州、四国、九州に分布していますが、生息地である「ため池」が埋め立てられたりしてなくなってしまい、環境省の定める絶滅のおそれのある野生生物をまとめたレッドデータブックによると、絶滅危惧種II類とされています。
葛西臨海水族園では、都内の唯一の生息地である葛飾区の水元公園からタネをわけていただき、15年以上前から大切に育ててきました。年によって、発芽する数が少なかったり、成長の悪い年もあったりしましたが、今年(2008年)はたくさんの発芽が見られました。その一部を、園内にある水辺の自然エリアの「流れ」に植えたところ、天気のよい日が続いたこともあり、とても大きく成長しました。
8月に入ると、紫色の小さな花が咲き、つぼみの数もどんどん増えています。水族園での開花は数年ぶりです。
オニバスの花には、紫色の花が咲く「開放花」と、開花せずに結実する「閉鎖花」があります。閉鎖花は、自家受粉といって、自分の花粉を使って受粉し、結実します。開放花より大きな果実ができ、タネも多くつきます。
オニバスの花の特徴は、水中からつぼみが伸びてきて、同じ株の葉が上にあっても、そのまま突き破って開花するということです。
9月ごろから握りこぶし大の果実がなり、その後、果実が破裂(裂開)して、中からタネがでてきます。タネはしばらく水面に浮いてただよいますが、その後、水底の泥の中に沈みます。
オニバスは、秋には枯れてしまう一年草です。タネの状態で冬をこし、翌年の5月ごろにまた発芽します。すべてのタネが発芽してしまうのではなく、タネの状態で何年も休眠することができます。記録によると、50年以上休眠することができるようです。
葛西臨海水族園の水辺の自然では8月中、閉鎖花も含むオニバスの花をご覧になれます。ぜひこの機会に、この不思議で珍しい植物を見に来てください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 中村浩司〕
(2008年08月08日)
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