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東京湾のアユを展示しています──3/5
 葛西臨海水族園の「東京の海」のコーナー2階、「地先の生物」の水槽で、2004年2月中旬から「アユ」の展示を開始しています。水槽の中をのぞいてみてください。体長6センチほどの細長く透明な魚は、みなさんが知っているアユとはずいぶんとちがいますね。
 じつはこのすがたは、海でくらしているアユ。川魚として知られているアユですが、なんと子どものときは海でくらしているのです。

 水槽の中のアユの子どもは、水族園の目の前の海、葛西臨海公園の西渚からやってきました。西渚は東京湾の奥にある人工の干潟。ここでアユが見られるのはめずらしいことではありません。
 毎月水族園がおこなっている地引き網調査では、冬から春にかけて、とくに2~3月には佃煮にできるほど(?)たくさんのアユの子どもが入ります。砂浜に打ちよせる茶色く冷たい海の中で、ちいさなアユの子どもがたくさん泳いでいるなんて! 実際に目にすると、何度見ても新鮮なおどろきがあります。

 アユの子どもは、海でくらす約半年のあいだに、沿岸の表層、底層、そして西渚のような波打ちぎわと、生息場所を変えることがわかっています。この間にプランクトンを食べて成長し、春になると河口近くに移動後、川をのぼって行きます。西渚で見られた子どもたちは、これから春にかけて川をのぼっていくのでしょう。

 水産試験場が多摩川でおこなっている調査によれば、2003年4月から6月に東京湾から多摩川をのぼったと推定されるアユの数は、66万尾。過去にはめっきり少なくなった天然アユの遡上数(海から川にのぼる数)は、水質の改善や川を分断する堰やダムに魚道を整備したことで、近年になって増えてきているそうです。

 海でとれたアユの子どもは、透明で内臓が透けてみえるほど。透明の体は、小さくて泳ぐ力もよわい子どもが、海中にまぎれて敵から見つかりにくくするための工夫と考えられています。
 川をのぼる時期になると透明の体が銀色をおびてきくるのですが、その変化は水槽の中でも見ることができます。たった一年間の一生のうちに海と川を行き来するアユ、その海でくらすすがたを、どうぞご覧ください。
〔東京動物園協会調査係 天野未知〕



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