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小さなケルプ、大きくなーれ!
 └─2008/03/14

 水面から光が差し込み、大きな海藻が波でゆらめく光景は、ぼーっと眺めているだけで、気分が落ち着いてきます。葛西臨海水族園の「海藻の林」水槽では、そんな展示をおこなってきました。そう、1年くらい前までは……。

 大型の海藻を水槽で飼育するのはとてもむずかしいことですが、この水槽では開園以来改良をかさね、8年ほど前から巨大な海藻「ジャイアントケルプ」の育成が可能になりました。そしてその4年後には、水槽内で繁殖し、水槽生まれのケルプも見られるようになりました。水槽内のケルプは、今のところ長くても3~4年で衰退してしまいます。それまでに次の世代が育つか、あらたな株を導入しないと展示が途切れてしまうことになります。

 ここ数年は順調に育成できていたケルプですが、昨年夏前ごろからだんだん元気がなくなり、あたらしい芽もほとんど確認できなくなりました。やがて古い株は葉がちぎれ、茎だけが目立つようになりました。それでも胞子葉(根元近くにある胞子をつける葉)がまだしっかりしていたので、淡い期待をもってそのまましばらく残していましたが、2007年10月にはとうとうプラスチック製の模造ケルプと交換せざるを得なくなってしまいました。

 ところが、2007年12月になって、岩に付いた紅藻の上からケルプの幼体が10株ほど生えているのが確認できました。一つ一つの株はまだ1枚の「葉」だけで、大きさは3~5センチです。そのままでは、紅藻がちぎれ、見失ってしまいそうなので、水槽内に浮かべたカゴに入れて育てることにしました。

 そして2008年3月には大きいもので15センチほどになり、仮根(岩などにくっつく部分)も伸びてきたので、小さな石につけ、水槽内の擬岩の上に置きました。

 いずれふたたび、本物のケルプがゆらめく光景をごらんいただけるよう、小さなケルプの成長を見守っています。

写真上:カゴの中で約3か月育てたケルプ。葉の長さは大きいもので約15センチ

写真下:水槽の岩の上に移したケルプ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 児玉雅章〕

(2008年03月14日)



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