今回ご紹介するのは、アメフラシという生物です。アメフラシをよく観察すると、貝殻のない大きめのカタツムリのようで、愛嬌のあるなかなかかわいい姿形をしています。
じつはこの生物、貝のなかまなのですが、貝殻は退化して外からは見えません。体の内部後方に薄い板状の貝殻の名残りが1枚隠されているだけなのです。
また、一つの個体が体内にオスの器官とメスの器官を両方持ち(「雌雄同体」といいます)、春先には何尾も連なって交尾していることがあります。交尾のあと、しばらくして産み出された卵塊は「ウミゾウメン」とよばれ、派手な黄色やオレンジ色をしているとともに、ゆでたソウメンそっくりのかたちです。
アメフラシの名前は、つつかれると濃い紫色の墨汁のような液を吐き、それがまるで雨雲が広がるように見えるので、「雨を降らす」という意味でアメフラシとなったようです。
アメフラシたちは今ごろから春先にかけて、岩場の磯などでたくさん見つけることができます。でも、不思議にほかの季節にはあまり見かけません。深いところにでも隠れているのでしょうか。
葛西臨海水族園では現在、「渚の生物」水槽の浅いところや「しおだまり」水槽でアメフラシを見ることができます。「しおだまり」水槽の前で午後おこなわれる職員によるスポットガイドで、もしかしたらアメフラシの名残の貝殻を触って確かめることができるかもしれませんよ。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 江川紳一郎〕
(2008年02月15日)
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