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なんだ、このホースは!?──ミョウガガイ
 └─2007年12月21日

 葛西臨海水族園の「深海の生物」コーナーでは、最初の水槽に不思議なかたちをした生き物がいます。じゃばらのホースの先に、四角い殻がくっついたような、ヘンなすがたです(写真上)。

 この生物の名は「ミョウガガイ」。むかしの人は、この殻の部分を野菜のミョウガの花芽に見立てて、この名前をつけたのでしょう。名前に“カイ”とつきますが、実際は貝のなかまではなく、カニやエビと同じ甲殻類で、長さ10センチていど、フジツボに近いなかまです。

 ホースのような部分は“柄”といい、その付け根で岩などに付着し、何個体かが集まって生活します。ミョウガの部分は“頭状部”で、口や肛門、生殖器官など、生きるために必要な器官がぜんぶつまっている大事な部分です。

 じっと見ていると、殻のすきまから、ときどき熊手のようなものが出てきます。これは蔓脚(まんきゃく)と呼ばれるもので、カニやエビでは歩くための脚(歩脚)にあたる部分です(写真下)。ミョウガガイはこの蔓脚で、ただようプランクトンなどをキャッチして食べています。

 卵から生まれてしばらく、幼生はまったくちがうすがたをしています。最初は浮遊生活をしていますが、その後、住みやすい場所を見つけるとそこに付着し、一生くっついて生活します。くっついたままで大変ね、と思うかもしれませんが、それほど不便でもなさそうです。餌となるプランクトンが豊富な場所さえ見つけられれば、あとはわざわざ動かなくても、ごちそうに囲まれて生活ができるのです。

 それに、まるきり動けないわけではありません。不思議なホースの部分は、ゆっくりですが、うにょ~っと柔軟に動きます。自分で歩いて移動することはできませんが、餌がたくさんやってくる水流の方向に体の向きを変えることができます。

 茶色という地味な色合いのせいか、つまらない生き物と見られて通り過ぎる方も多いかもしれませんが、じっと観察すると、何か動きが見られるはず。深海に住むミョウガガイ。すいている平日に、葛西臨海水族園でゆっくりと観察してみてください。

写真上:ミョウガガイ
写真下:蔓脚(まんきゃく)。これでプランクトンをキャッチ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 高濱由美子〕

(2007年12月21日)



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