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寒い季節に孵化するヤマメの卵
 └─2007/12/14

 葛西臨海水族園の「水辺の自然」エリアにある「渓流」水槽では、川の上流の冷水域に生息するヤマメやイワナなどを展示しています。その水槽の前に小さな水槽を設置し、ヤマメの卵と稚魚の展示を始めました。

 この卵は2007年11月14日、財団法人東京都農林水産振興財団「東京都奥多摩さかな養殖センター」からゆずり受けた人工受精卵です。ヤマメは秋から冬にかけて、寒い季節に産卵するので、この時期に人の手によって卵を受精させます。

 ゆずり受けた卵はすでに発生が進んでおり、オレンジ色の半透明の卵の中には稚魚が見えていました。そこで、展示場の裏にある水槽に収容し、孵化を待ちました。卵は水温約5℃の冷たい水の中で、徐々にオレンジ色から透明になり、10日後には最初の1尾が孵化、その後、元気な稚魚がつぎつぎと孵化しました。

 その後、水温6℃の小型展示水槽に移動。卵から孵った稚魚は、たまに尾びれを振るものの、底にしいてある砂利のすきまでじっとしています。ヤマメの稚魚をよく観察すると、おなかにオレンジ色の袋があります。この袋は「さいのう」(臍嚢)といい、卵から孵ってまもない稚魚にとって大切な栄養分となります。稚魚はじっとしているあいだ、餌を食べず、このさいのうから少しずつ栄養を吸収し、成長していきます。

 卵と稚魚が同時に観察できるのは今だけです。冬の冷たい水の中で成長するヤマメのすがたを、葛西臨海水族園で観察してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 鈴木聡子〕

(2007年12月14日)



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