「ユウゼン」という名前のチョウチョウウオをご存知ですか? 黒の地の鱗一枚一枚に白い斑点が入り、背びれなどには鮮やかな黄色のふちどりがあって、一見地味ですが、「いぶし銀」のような貫禄のある美しい魚です。
大きさはせいぜい全長で15センチくらいまでですが、その名前のもととなった「友禅染め」のような色彩模様と、南日本の近海(伊豆諸島、小笠原諸島、沖縄など)にしかいない日本固有種のため、愛好家には人気の高い魚です。
伊豆、小笠原諸島の海では、水深10メートル付近の岩場で群れて泳いでいるのがよく観察され、また、幼魚も同じ場所で見つかることから、ここで繁殖していることが予想されますが、くわしい生態などはよくわかっていません。
ユウゼンは、葛西臨海水族園の「東京の海」エリアに入ってすぐ、「礁」の水槽でごらんになれます。現在、この水槽で泳いでいるユウゼンは昨年(2006年)12月に小笠原諸島の父島で採集された個体です。
水族園に到着後、まずは裏の水槽で餌づけをして元気を回復させます。さらに体についている寄生虫を取り除き、今年の5月にやっと展示水槽にデビューできました。水族園の魚たちはすべて、このような準備を経て展示水槽に出てきます。これはもちろん、魚を元気な状態で見ていただくためであり、また、水槽内の他の魚への病気や寄生虫の害を防ぐためです。
手間のかかる作業ですが、元気な魚たちを見ていただき、感動していただけるのは、飼育担当者にとって最大の喜びです。日本固有のチョウチョウウオ、ユウゼンをぜひ見に来てください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 江川紳一郎〕
(2007年11月23日)
|