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水生昆虫の王様、タガメの展示
 └─2007/08/24

 葛西臨海水族園の本館から離れた「水辺の自然」エリア、「池沼」水槽前の小水槽で、タガメの展示を始めました。

 タガメは体長7センチにもなる日本最大の水生昆虫です。池や沼、田んぼなどでふつうに見られます──というのは50年以上前の話。農薬による水の汚染、開発による池沼の減少などによって激減してしまいました。また、夜行性で光に集まる習性のあるタガメにとって、街灯の増加なども減少の原因となってしまいました。今では山間部や農薬の影響が少ない水田やため池などで、わずかに生息が確認されるほどになってしまいました。

 葛西臨海水族園の水槽内では水草などにつかまってじっとしていることが多いので、とても観察しやすくなっています。いろいろな角度から攻めてみましょう。

観察ポイント1──カマのような前脚

 タガメの特徴ともいえるこのカマ状の前脚は「捕獲脚」です。大きなカマを水平に開き、じっと獲物を待ち伏せします。タガメはとても獰猛で、魚やオタマジャクシ、カエルなども襲って食べてしまいます。獲物が前を通り過ぎると、すばやくカマを動かしてしっかりキャッチ! 先端が鋭いかぎ状になっているので、一度捕まえたら逃がしません。自分の体より大きな生き物でも、すべての足をつかって体ごと押さえ込みます。

観察ポイント2──水面からでたお尻

 水中内でくらすタガメですが、お尻(体のいちばん後ろ)は水面から出しています。よく見ると細い管を出しているのがわかります。この管は「呼吸管」と呼ばれており、ここから空気を取り入れ、翅と背中のあいだにためて呼吸に使います。

 目、口、水草につかまっている足など、観察ポイントはまだまだたくさんあります。ぜひ水槽前でじっくりと観察してみてください。

 来園者の方がタガメを前にすると、年配の方からは「なつかしいねぇ」、子どもたちからは「なにこれ? 見たことない! かっこいい!」という反応がかえってきます。ここ最近、保護活動などが進み、地域によっては数が増えているところもあるようです。タガメが暮らせるような豊かな自然を守り、いつの日かふつうに見られる昆虫になることを願っています。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 細野潤子〕

(2007年8月24日)



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