葛西臨海水族園では、生物の名前や分類を紹介する「種ラベル」を各水槽に貼り出しています。それを参考にして、水槽の中をじっくり観察されているお客さんも多いのですが、たまにお目あての魚が見つけられず、「なんだ、この魚いないの!?」という声も聞こえます。そんなとき、飼育係としてはちょっとがっかり。(背後から突然声をかけ、解説することもありますが……。)
というわけで、今回クローズアップするのは探しにくい魚たち。「東京の海」エリア「伊豆諸島4」水槽のイソギンポとヘビギンポです。かれらは泳ぎまわらず、岩の上にじっとしていることが多いので、見つけにくいのです。
穴の中からひょっこり顔だけ出しているなんてこともあります。体色も岩の色にとてもよく似ています。とはいえ、まったく動き回らないわけではありません。とてもすばしっこく、逃げ足は速いほうです。大きい魚が近づいたりすると、ササササッと隣の岩などへ移動します。
まあ、とにかく地味な魚です。茶褐色に小柄なからだ。一見しただけでは、2種の区別はむずしいかもしれません。まるい頭にかわいいまつげが目の上を飾っているのが「イソギンポ」です。このまつげは「皮弁」(ひべん)と呼ばれており、体表の一部が変化したものです。
「ヘビギンポ」にも皮弁があります。それはちょっとおちゃめな短い鼻毛。(正確には前鼻孔[ぜんびこう]という部分の皮弁です。)イソギンポにくらべ、口の先端がとがっていて、三角の背びれが特徴です。
イソギンポもヘビギンポも、メスが岩かげなどに卵を産みつけ、孵化するまでオスが守ります。2007年2月にリニューアルオープンしたばかりの水槽ですが、4月にはすでにイソギンポの産卵が確認されています。
今回ご紹介したイソギンポやヘビギンポのように、水槽内を泳ぎ回らない魚もたくさんいます。ですから、魚を見つけられなかったときには、
1)岩の上や岩かげをのぞいてみる
2)意外にアクリルガラスのすぐ下や、水槽の隅に
いることも多いので、そのあたりも見てみる
3)飼育係に聞いてみる♪
「東京の海」エリアは2階部分にあがることができます。ここから、飼育係の作業エリアである水槽上部を観覧することができます。ぜひ気軽にお声をかけてください。お待ちしています!
写真上:イソギンポ
写真下:ヘビギンポ
〔葛西臨海水族園飼育展示係 細野潤子〕
(2007年5月18日)
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