世界にはいろいろ変わった魚がいますが、「ヘコアユ」という魚もなかなか風変わりなすがたとくらしをしています。まずは、そのすがた。15センチくらいの細長いかたちをしており、体はとても薄っぺらで、口は細長く突き出ています。そして、体全体がエビのような硬い甲板でおおわれていて、ピンと伸びたまま、まったく体を曲げることができません。
すがたもなかなか変わっていますが、それより奇妙なのは泳ぎ方です。口を下に向けて、逆立ちのような姿勢で泳ぐのです。体は全く曲がらないので、小さなひれだけを動かして、上下左右に自在に動き回ります。
ヘコアユのひれは小さく透明で、しかも細かく動くので、遠くからではなかなか見えません。体には茶と黒の縦縞があり、細い枯葉がただようようにゆっくり泳ぎます。注意して見ないと、近くにいてもヘコアユに気がつかないかもしれません。
ヘコアユは、葛西臨海水族園の「世界の海」エリアの「インド洋」水槽で約20尾を展示しています。また、この水槽ではリュウキュウスガモという海草も育てています。ヘコアユはガンガゼというトゲの長いウニに隠れることが知られていますが、スガモのような海草が生える場所でもよく見られます。細長い葉に似たヘコアユは、こうした場所で身を隠してくらすのに都合がよいのでしょう。
水槽の中のヘコアユは、逆立ちをしながら群れをつくって泳ぎまわっています。葛西臨海水族園にいらっしゃたら、よーく目をこらしてヘコアユを探してください。1尾見つけることができたら、ほかのヘコアユもすぐそばに見つかるはずです。ヘコアユのおもしろいすがたと泳ぎを、ぜひ観察してみてください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 木船崇司〕
(2007年4月20日)
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