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“おしゃべり”になったヒカリキンメダイ
 └─2007/04/13

 ヒカリキンメダイは、西部太平洋にすむ夜行性の魚です。発光する魚としてよく知られており、目の下にソラマメのようなかたちの大きな発光器をもっています。ここに発光バクテリアが共生していて、緑色がかったかなり強い光を放ちます。ヒカリキンメダイはこの発光器を表裏に回転させて光を点滅させ、なかまどうしのコミュニケーションや求愛に使っていると考えられています。光を使って“会話”しているといったところでしょうか。

 葛西臨海水族園では以前から、「世界の海」エリアの「セレベス海」水槽で、中を真っ暗にしてヒカリキンメダイを展示してきました。ところが、飼育を始めてしばらくはきれいな光を発していたのに、やがてまったく光らなくなる、という事態がつづいていました。

 そこで、ヒカリキンメダイの発光をうまく見せている、ほかの水族館の飼育方法を調べてみると、当水族園のえさでは、量も栄養も十分ではないことがわかりました。さっそく、栄養強化のためのサプリメントを加えながら、いくつかのえさをたっぷり与えるようにしたところ、いったんは光が弱くなった個体も、興奮時には徐々に強い緑色の光を放つようになりました。

 ところが、です。発光能力はあるのに、ふだん、それをなかなか発揮してくれないのです。ほかの水族館の水槽では、魚たちは大きく泳ぎまわりながらピカピカとよく光り、まるで大声でしゃべりながらはしゃぎまわっているように見えます。

 それにくらべて当園の水槽では、えさの時間以外、岩の奥の方にじっとしたまま、あまり動きまわらず、光も弱く、まるで陰に隠れて、ないしょ話をしているかのようです。会話がふつうにできる健康状態になるまで、もう少し時間がかかるのかな、と思っていたところ、夜中に館内がすっかり消灯し、水族園全体が寝静まったころになると、ヒカリキンメダイたちはしっかりと光りながら、さかんに泳ぎまわっていることがわかりました。夜行性で神経質なかれらのことです、日中は館内のほのかな明かりに浮かびあがる人間の影におびえ、おしゃべりどころではなかったようです。

 さっそく、水槽のアクリルに簡単なふたを取りつけ、小さなのぞき窓だけを開けて、外側の人の影響が水槽の中に伝わりにくいようにしたところ、ピカピカとよく光りながら水槽内を泳ぎまわってくれるようになりました。

 一度に観察ができる人数が限られるので、当面はあまり館内が混雑しない平日だけの試みですが、はしゃいでいるかのような彼らの光をぜひ観察してみてください。

写真上:光るヒカリキンメダイ
写真中:ストロボ発光による撮影
写真下:水槽に覆いをつけました

〔葛西臨海水族園飼育展示係 多田諭〕

(2007年4月13日)



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