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ソウギョの卵発見!──2006/07/14
 2006年6月下旬、葛西臨海水族園の目の前にある「西なぎさ」に出かけたところ、透明なゼリー状の小さな球体(直径約5ミリ)が海中にたくさんただよい、砂浜にも打ちあげられていました。水族園に持ち帰って調べたところ、どうやら「ソウギョ」の卵のようでした。中には、すでに孵化しているものもいました。

 ソウギョはもともと中国原産の淡水魚で、ハクレン、コクレン、アオウオとともに中国では「四大家魚」と呼ばれ、古くから養殖されてきた魚です。第2次大戦中までは、食用を目的として中国から日本に移植され、各地で放流されました。しかし、ふる里の中国と日本とでは、すみ心地がかなりちがうようです。

 ソウギョは、揚子江をはじめとした勾配の少ない、広大な大地をゆっくり流れる「大河川」でくらしています。「大河川」で産卵し、卵はゆっくりと水中をただよい、流下しながら孵化します。

 一方、日本では、勾配が大きくて狭い土地を走る、流れの速い「小河川」がほとんどです。こういった「小河川」でソウギョが産卵しても、孵化する前に海にたどり着いた卵を待っているのは死だけです。

 しかし、「大河川」である利根川水系は、ソウギョが産卵後、海にたどりつく前に孵化できる、日本で唯一の水系と考えられています。ところが、利根川水系といっても、葛西臨海水族園側を流れる江戸川の場合、ソウギョの卵は孵化する前に海にたどり着き、死んでしまいます。

 悲しい話ですが、そもそも広大な中国大陸の河川環境で適応、進化してきた「四大家魚」を、狭い山岳島国の日本の河川環境に人間が無理に適応させようとした結果といえるでしょう。

〔葛西臨海水族園調査係 田辺信吾〕

写真上:孵化していた個体
写真下:手に載せたソウギョの卵

(2006年7月14日)



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