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水面でくらす工夫、ミズスマシ──2006/05/05

 春になってあたかかくなり、身近な場所でさまざまな動植物が活動をはじめています。葛西臨海水族園では2006年4月から、淡水生物館の小水槽でミズスマシの展示をはじめました。

 ミズスマシは水面に落ちた小さな虫を食べて生活している昆虫です。水面に落ちた虫を前足でかかえこむようにつかまえて、かじりとるようにして食べます。水面で生活する虫というとアメンボが有名ですが、アメンボはカメムシのなかま、ミズスマシはカブトムシなど甲虫のなかまです。

 このミズスマシ、水面で生活するために他の水生昆虫にはない特徴をもっています。第一に、水面でくらしていると空からは鳥、水中からは魚などの外敵におそわれる危険があります。そこで陸上監視用の眼を二つ、さらに水中監視用の眼も二つもっていて、合計4個の眼で陸上と水中を同時に見ることができるのです。

 第二に、水面のミズスマシを見ると、くるくると円を描くようにして泳ぐようすが観察できます。ミズスマシはこうして泳ぎながら、水面にできる波を利用して、餌や障害物の位置を知ることができるのです(動画を下記リンク↓からごらんください)。

 第三に、ミズスマシの体長は7ミリ前後と小さいにもかかわらず、水面を移動するスピードは非常に速く、1秒間に60センチも移動するという報告があります。いったいどうしたらそんなに早く泳ぐことができるのでしょう?

 ミズスマシの体を観察してみると、前脚は餌をつかまえるために長くなっていますが、泳ぐための中脚と後脚は短く、しかも平たくなっていて、とても泳げるようには見えません。じつは、ミズスマシは中脚と後脚をスクリューのように回転させて、水面を高速移動することができるのです。

 一昔前なら、ミズスマシはよく見られるありふれた生き物でした。しかし最近、ミズスマシという名前は知っていても、実物は見たことがないという声をよく聞きます。近年では開発等によりミズスマシがすみやすい環境が少なくなり、ミズスマシを見る機会は減ってしまっています。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 橋本浩史〕

※ミズスマシがくるくる動くようすを動画(約20秒)でごらんください。

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(2006年5月5日)



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