「東京の海」エリアの「伊豆七島」水槽では、昨年からウミトサカのなかまの展示をこころみています。このなかまは、じつはサンゴの一種なのをご存じでしょうか?
「サンゴ」と聞くと、熱帯にある色とりどりのきれいなサンゴ礁を思い浮かべるかもしれません。熱帯のサンゴ礁をつくるなかまは「ハードコーラル」と呼ばれ、体に石灰質の骨格をもちます。一方、ウミトサカは、体が柔らかく、「ソフトコーラル」と呼ばれるサンゴで、からだに石灰質の骨格がなく、細胞の中に骨片という石灰質の小さな骨をもっているのが特徴です。
「トサカ」という名前は、ニワトリの鶏冠(トサカ)に似たケイトウの花にかたちが似ていることからつけられたようです。ウミトサカのなかまは、白い透明感のある茎状のからだに、赤や黄色、オレンジ色のモコモコとしたかたまりをつけた、カリフラワーのようなかたちをしています。
水族園では、今までウミトサカ類の長期飼育になかなか成功せず、展示のむずかしい生き物の一つでした。濾過装置による還元化や水質の改善などをおこない、現在、よい状態で半年以上飼育しています。
ところで、この水槽の主役がだれか、もうお気づきになりましたか? そう、魚ではなく、じつはこれらソフトコーラルを中心とした無脊椎動物なのです。ほかにも、サンゴ類に属するフトヤギ等のヤギのなかまや、ウチウラタコアシサンゴ、ニッポンウミシダ、オオウミシダ、ヒメセミエビ、オトヒメエビ、サラサエビなどを展示し、水深20~30mの岩場の景観を再現しています。
これら無脊椎動物が作り出す景色は、ちょっとした海のお花畑のようです。ポリプを開き、水流に揺らめく無脊椎動物の不思議な美しさをぜひ、見にいらしてください。
〔葛西臨海水族園飼育係 杉野隆〕
(2006年2月3日)
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