海中でのくらしに適応し、飛ぶことをやめた鳥は「ペンギン」ですが、では、水中をペンギンのように泳ぐけれど、飛ぶのだってやめてないよ!という鳥がいることをご存知でしょうか? 葛西臨海水族園の「海鳥の生態」という水槽で飼育されているウミガラスとエトピリカは、空も飛び、水中も泳ぐことのできるウミスズメ類のなかまです。
この鳥たちはあまりに泳ぎがうまいためか、来園者にペンギンにまちがわれてしまうことがあります。とくに、体が白と黒のツートンカラーで、よちよち歩くウミガラスは、ペンギンにそっくりです。
でも、よく見るとペンギンとはちがう翼をもっていることがわかります。ペンギンの翼は「フリッパー」と呼ばれ、1枚の板のようになっていますが、ウミガラスやエトピリカなどのなかまの翼は、空を飛ぶ鳥と同じように、小さな羽が組み合わされてできています。
しかし、水中を羽ばたくときには、水の抵抗が大きいので、空を飛ぶときとはちがって、翼をいっぱいにひろげて羽ばたくことはできません。そこで、翼を少しすぼめた状態で羽ばたきながら水をかいています。水族園では、ペンギンとウミガラス、エトピリカの翼のちがいが観察できます。
水族園で、かれらがもっとも活動的に泳いでいるすがたを観察できるオススメの時間は、餌の魚(キビナゴ)をあたえる11時45分と16時です。それまで、岩の上で休んでいることの多かった鳥たちが、プールの中へ飛んで入り、水中に投げこまれた魚を、泳ぎながらキャッチするようすが見られます。
水中で翼を羽ばたかせ、自由自在に泳ぐ姿は、まるで空を飛んでいるようです。その魚をとらえる動きの素早いこと! カメラにおさめるのは至難の業です。
また、給餌の時間以外にも、ときおりアクロバットさながらの泳ぎを見せてくれることがあります。その一例をご紹介すると……突然、水中に勢いよく垂直に潜ったかと思うと、くるくる回転しながら浮上し、そのままスポンッ!と陸の上に飛び出すのです。この他にも、鳥たちがすばやい動きで追いかけあうこともあります。こうした行動には理由があるのかもしれませんが、私には鳥たちが遊んでいるようにも見えます。
このように、水中でもたくみに動きまわる鳥たちですが、他の鳥と同じように自由に飛ぶこともできます。ウミガラスもエトピリカも、切り立った岩棚などを使って子育てをします。こうした場所は外敵が近寄りにくく、子育てに適しているのです。
もし飛ぶことができなければ、このような場所は利用できません。飛ぶことも泳ぐこともうまく使いこなしてくらしているのですね。水中をたくみに飛びまわるウミガラスとエトピリカのすがたを見に、水族園にいらしてください!
〔葛西臨海水族園飼育係 福田愛子〕
※写真はウミガラス
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