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名建築家、ブルズアイジョーフィッシュの巣穴
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 2005年2月末から「バハカリフォルニア」の水槽で、ブルズアイジョーフィッシュ(以下、ブルズアイ)の展示を始めました。このなかまは海底に巣穴を掘ってくらしており、展示水槽の中では、穴を掘るようすや、巣材となる貝殻などの取り合いが観察できます。
 今回は昨年(2004年)、中米コスタリカでおこなったブルズアイ採集のようすとともに、自然で見られるかれらの見事な巣穴を紹介しましょう。

 コスタリカの太平洋側にある小さな町「プラジャデルココ」が採集の拠点です。漁師の情報で、ブルズアイがいるという小さな入り江(写真上)に潜ってみると……。水深わずか6メートルほどなのに、水中は薄暗く、1メートル先も見えません(写真中)。

 海底の細かい泥が波の動きによって舞いあがり、とてもにごっているのです。ブルズアイの採集は巣穴を見つけなくては始まりません。しかし、この状況で見つけられるのかどうか。しかも、見たところ巣穴もたくさんあるわけではなさそうです。
 そこで、4名のダイバーが横一列に並んで泳ぎ、巣穴を見つけたらブザーで知らせるという作戦をたてました。にごった海の中を、下を向いてひたすら穴をさがすこと30分、やっと一つめを発見! 直径7cmほどの丸い穴が、泥底にありました。穴のまわりには二枚貝の殻がきれいに並べてあり、のぞいてみると、層状に積み重なった貝殻の壁が深く続いています。魚が作ったとは思えない美しいできばえです(写真下)。

 こうして巣穴をさがすこと3日間、夜は穴をさがす夢にうなされつつも、なんとか十数個の穴を発見しました。いずれの穴も、海底にほぼ垂直に掘られ、壁は二枚貝の殻で補強されています。大きな穴は深さが1メートル以上もあり、貝殻も 100枚以上必要になりそうですが、不思議なことに海底には貝殻はほとんど落ちていません。貝殻の数が、ブルズアイの生息数を制限しているのかもしれません。

 水槽で観察すると、エサを食べるとき以外、ブルズアイはまわりのようすをうかがうように穴から顔だけ出し、ほとんど穴の中にいます。巣穴から着かず離れずのくらしをしているようです。そんな大事な隠れ家を、より壊れにくく長持ちさせるために、立派な穴を作るのでしょうか? かれらの豪邸には、ハタやハゼのなかまが間借りしているようで、中をのぞくとそれらの魚が飛び出してくることもありました。

 さて、水槽のブルズアイの巣穴はどうでしょう? 水槽にはシオフキの貝殻をたくさん入れましたが、いまのところ、海で観察したほどの豪邸は作れないようです。中にしいた砂の質や貝殻のかたちが微妙にちがうのでしょうか?
 それでも貝殻をくわえて運ぶようすや、他の個体の殻をうばう行動などを観察できます。この魚は、オスが口で卵を守る習性もあり、これからも目がはなせませんぞ!
〔東京動物園協会調査係 天野未知〕

・写真上:ブルズアイの生息する入り江
・写真中:にごった水中で巣穴をさがす
・写真下:すばらしいできばえの巣穴
(写真下は雨宮健太郎撮影)

(2005年3月25日)



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