葛西臨海水族園では、平成28年10月5日(水)、深海性のタコの一種メンダコが世界で初めて水槽内で孵化しました。残念ながら、今回は孵化後5日目の10月9日(日)に死亡しましたが、水槽内での孵化は世界でも初めてで、貴重な事例ですのでお知らせします。
なお、孵化した卵は本年5月14日(土)に斃死したメンダコから得られた卵で、
別個体が水槽内に産卵した2つの卵については、現在も経過観察中です。
産卵した2つの卵は薄茶色の鞘のようなものに包まれており、卵の内部のようすが見えません。そのため発生が進んでいるかは不明ですが、順調に発生が進んでいればさらなる孵化が期待されます。今回の事例を今後の本種の孵化後の幼生育成の参考にしていきます。
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孵化したメンダコの幼生 | (参考)泳ぐメンダコ |
孵化日時 2016年10月4日(火)夕方から翌5日(水)の朝にかけて
孵化個体の死亡日時 2016年10月9日(日)の14時30分
孵化個体の死亡時の大きさ 全長約10mm
飼育場所 園内「繁殖センター」内水槽(非公開)
産卵から孵化までの経緯 2016年4月19日(火)
静岡県沼津市戸田港沖の水深約200mにおいて、深海底曳き網漁により親個体を採集。
当園の繁殖センター水槽(非公開)で飼育開始。水温約13度。
2016年5月14日(土)
繁殖センター内の水槽にて斃死を確認。
解剖時に卵を摘出し、繁殖センター内の水槽に収容。
2016年9月17日(土)
卵の摘出から125日後、卵の発生が進んでいることを確認。
2016年10月4日(火)夕方から翌5日(水)の朝にかけて
孵化を確認。卵の摘出から143日後。
2016年10月9日(日)
メンダコ幼生の死亡を確認。孵化から5日目。
孵化した幼体の状況 メンダコの繁殖生態に関する研究は少なく、孵化までの日数なども不明です。
当園で2015年に見られた、孵化途中で死亡した例ではおよそ半年でしたが、今回はそれに比べて1~2ヵ月ほど早く孵化したことになります。
孵化した幼生は、成体に比べて胴部とひれが大きく、透明であるという特徴が見られました。
その他の卵の情況 当園では別個体が水槽内に産卵した2つの卵について経過観察です。飼育水温にもよりますが、孵化までの日数がおよそ半年とすれば、11月~12月に孵化する予定です。ただし、今回の孵化日数が正常だとすれば、10月にも孵化の可能性があります。
引き続き注意深く飼育・観察をおこない、東京海洋大学の土屋光太郎准教授との共同で研究を進めていきます。
(2016年10月27日)