葛西臨海水族園「水辺の自然」エリアの「池沼」展示内にある「水辺の生き物」水槽では、アズマヒキガエルを展示しています。
アズマヒキガエルは本州の東北部や北海道の南部に見られる日本固有のカエルで、平野部や山地だけでなく、都市部にも生息しています。
存在感ある大きさやゴツゴツした外見からか、アズマヒキガエルを見た来園者のみなさんからときどき、小さな悲鳴のような声が聞こえることがあります。しかし、アズマヒキガエルの学名は
Bufo japonicus formosus で、「ハンサムな日本のヒキガエル」とか「きれいな日本のヒキガエル」といった意味のようです。調べてみると、「ヨーロッパヒキガエルに比べると色彩斑紋(皮膚の模様や色)が顕著なこと」に由来するようですが、みなさんにアズマヒキガエルの魅力を知っていただきたく、他にもハンサムといえるところはないかと考えてみました。
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アズマヒキガエル成体 | 幼生(オタマジャクシ) |
まずは、歩くことにたけたどっしりとした前肢、後ろ肢。一般的にカエルといえばぴょんぴょん跳びはねるイメージがあるかと思います。しかし、産卵期以外ほぼ陸上で生活するアズマヒキガエルは、この立派な両肢でのっしのっしと歩いて行動します。
さらに、えさとなるものに素早く反応して出す舌と、何でも入れられるのではないかと見える大きな口。現在展示している個体は、与えられたえさだけでなく、ガラスごしに見える隣の水槽に入れたえさ用コオロギにも反応し、舌を出していました。口は大きいですが、細かいえさも不定期に与えているため、タイミングが合えば見られる特別な「ハンサムポイント」です。
アズマヒキガエルは夜行性なので、展示している個体も日中はじっとしていることが多く、あまり動きません。「動かないとつまらない」なんて言わずに、ぜひ「ハンサムポイント」をよく観察してみてください。
そして、「池沼」の隣にある「湿地の生態」水槽では、この時期にしか見ることのできないアズマヒキガエルのオタマジャクシがいます。成体からは想像もつかないくらい小さくて丸くて黒い、まるで四分音符のようなかわいらしい姿。このギャップも、「ハンサムポイント」のひとつだと個人的には思っています。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 川崎繭〕
(2016年04月01日)