葛西臨海水族園の「水辺の自然」エリア渓流展示内でカジカガエルを展示しています。

水槽全景
カジカガエルは本州・四国・九州に分布している日本固有のカエルで、山間部の渓流やその周辺の森林に生息しています。「フィフィフィフィフィー」という、すきとおるような美しい声で鳴くカエルとしてご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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カジカガエル | 岩の隙間でじっとするカジカガエル |
カジカガエルの特徴である扁平な体形や顔の形は、渓流の岩の間に隠れるときに役立ち、岩石に似た灰褐色の体色は、敵から身を守る保護色となります。どちらかというと臆病な性格のカジカガエル。展示槽でも岩の隙間にひっそりと身を潜めていることがあり、その隠れかたの上手さに驚かされます。
カジカガエルのもうひとつの特徴として、オスとメスの体格差が顕著な点が挙げられます。一般に、カエルはオスよりもメスの方が大きく成長する種が多いのですが、カジカガエルはその差が顕著で、展示しているメスも体長(吻端から総排泄口までの長さ)が約5センチあり、オスは約3センチなので、 1.5倍以上の体格差があります。さらにオスは細身なのに対し、メスは体全体がふっくらとして大きく、見ばえのよい体形です。
じつはこの展示しているメスは、給餌時にかなりパワフルで大胆な姿を見せることがあります。大きな体でオスを押しのけ、えさのコオロギをすべて食べてしまうことがしばしばあり、さらには、オスの口の中に半分以上入っているコオロギを体あたりして横取りしたこともありました。
そんなときは、飼育係がピンセットでえさをオスの口元まで持っていって与えます。ピンセットを出すタイミングとオスの体勢が合わないと、メスが脱兎のごとくえさを奪い去っていくため、飼育係にとって気が抜けない時間です。
カジカガエルの凛としたたたずまいとは間逆のこのメスの姿。えさは不定期に与えていますが、タイミングがよければご覧いただけるかもしれません。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 川崎繭〕
(2015年11月20日)