成長にともなって呼び名が変わる魚を一般に「出世魚」と呼びますが、今回紹介するコノシロもその一つです。東京ではシンコ(〜全長7センチほど)、コハダ(〜全長15センチほど)、コノシロ(〜全長25センチほど)と変わります。江戸前寿司のネタとして有名なので、一度は食べたことのあるおなじみの魚かもしれません。しかし、生きている姿をお見せするのはそう簡単ではありません。

コノシロ成魚
葛西臨海水族園で今年(2015年)6月に「漁業」水槽へあらたに展示したコノシロは、船橋漁港から巻網漁船に乗って採集した個体です。船は夜7時に出港し、翌朝8時まで操業するという、かなりハードな採集の一つです。

採集のようす
コノシロはうろこがはがれて傷つきやすいため、慎重に扱わなければいけません。漁獲されたら水ごとすくってカンコ(甲板にある生け簀)へ移し、港に着いたら活魚車へと乗組員総出のバケツリレー、さらに水族園に着いて水槽へ移す際も慎重に運びました。
飼育にあたっては、コノシロは多くのえさを一度に食べられないためこまめに給餌し、予備水槽にいるうちから数種類のえさを食べられるように慣らして、展示水槽で同居する他の魚たちとのえさをめぐる競争に負けないよう備えました。その甲斐あって展示水槽でもよく食べ、元気に泳いでいます。ただし急激な光の変化に敏感なので、驚かせないよう、夜も薄暗い照明を点けたままにするなど、工夫をしています。
一方、シンコやコハダと呼ばれるサイズの幼魚や若魚は、毎年夏から秋ごろに水族園の目の前にある葛西海浜公園の人工干潟「西なぎさ」にやってくるので、タイミングが合えば地曳網調査で採集されます。今年の8月初旬におこなった地曳網調査では、おもに全長4センチほどのシンコが 100尾近く採れました。次回の調査では、成長したコハダが網に入るかもしれません。「東京の海」エリアの「運河」水槽では、昨年採集したコハダサイズのコノシロを展示しているので、こちらもぜひ注目してください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 村松茉由子〕
(2015年09月11日)