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「水辺の自然」コーナーと外来種──11/8
 葛西臨海水族園の「水辺の自然」のコーナーでは、本来関東周辺で見られた川や池などの環境を紹介しています。ここで展示している生物は、研究機関などからいただいたものもありますが、われわれ水族園職員がじっさいにフィールドに出かけて採集したものも少なくありません。

 先日も、茨城県の水郷地域にタナゴなどの淡水魚を採集にいきました。そこは、関東地方でも比較的低地の沼や小川の環境をのこしているところで(写真上)、東京周辺ではほとんど見られなくなったタナゴのなかまが採集できるところでした。ところが、ちかごろ急に増えている外来種のためでしょうか、目的の生物がどこででも採れるというわけにはいかなくなりました。

 以前からこのあたりでは、国内の別の場所から入ってきた魚として、琵琶湖原産のヒガイやワタカが知られていました。また、外国から入った魚類としては、戦前、食料増産のために中国大陸から持ちこまれたハクレン、カムルチー(通称ライギョ)、タイリクバラタナゴなどが生息していました。

 ところがここ10年くらいは、北米原産のオオクチバス(通称ブラックバス)とブルーギル(写真下)が、その生態と食性から、これまでいた魚たちを駆逐するいきおいで増えつづけています。この2種は、ゲームフィシングの人気魚として、釣り人によって放流されたとか、コイなどの放流事業などにまぎれて放流されたともいわれていますが、いずれにしても、いまでは完全に定着し、その分布をすみずみまで広げているようです。

 とくにブルーギルは、たんぼのそばに流れている幅2メートルほどの小川にまで入りこんでいました。この小川で採集された魚類約 200尾のうち、在来種であるアカヒレタビラ、モツゴ、トウヨシノボリは20尾くらいしかなく、ほとんどがブルーギルとタイリクバラタナゴでした。

 魚類以外では、オオカナダモ(南米原産)が繁茂する用水路で、おなじみのウシガエルのオタマジャクシとアメリカザリガニ(いずれも北米原産)がたくさん採れました。また、釣りをしていると、ミシッシピーアカミミガメ(通称ミドリガメ、北米原産)が目の前にポッカリと顔を出し、周辺はセイタカアワダチソウ(北米原産)が黄色い花を満開に咲かせていました。

 このような状況ですから、かつての生物相を回復させるのはとてもむずかしいこととのようですが、水族園の「水辺の自然」では、あくまで本来の環境を展示していくつもりです。

〔葛西臨海水族園調査係 池田正人〕



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