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タナゴ類の婚姻色
 └─2014/06/27

 葛西臨海水族園水辺の自然エリアの「池沼」では、現在、タナゴ、ヤリタナゴ、アカヒレタビラの3種のタナゴを展示しています。

 タナゴのなかまは、繁殖期になるとオスの体色や模様がふだんよりも濃く、鮮やかに色づきます。繁殖期特有のこの色彩を「婚姻色」と呼び、模様は種類ごとに異なります。また、吻端に小さな白い突起(追星)が多数でてくるのも繁殖期のオスの特徴です。

 一方、メスは卵が発達して腹部が膨らみ、総排泄口から細長いヒモのような産卵管を出します。タナゴのメスはこの産卵管を二枚貝の出水管(呼吸や餌を濾しとった際に水を体外へ排出する管)から貝の体内に入れ、鰓に産卵します。

 続けてオスが二枚貝の入水管(貝が体内へ水を取り入れる管)に放精し、卵は貝の体内で受精します。卵は貝の中の鰓にとどまることで、外敵に襲われず、また常に新鮮な水を得ることができるのです。

 展示している3種のタナゴは晩春から初夏が産卵期です。オスの婚姻色が目立ちはじめたので、2014年6月初旬に産卵床として二枚貝を入れてみました。

 二枚貝が移動しないよう数個体をひとつの鉢植えの中に入れました。すると、気になるのかすぐに二枚貝の周りにタナゴのなかまが集まり始め、貝を確保するためのオス同士のなわばり争いが始まりました。貝の周辺をなわばりにしたオスは、次から次へと近づいて来るライバルを追い払うのに必死です。

 メスが近づいて産卵するやいなや、なわばりのオスをはじめ周りのオスも一気に集まり、我先に貝に放精を開始するようすが観察できます。

 「池沼」水槽でタナゴ類の婚姻色が見られるのはこの時期だけのことです。サンゴ礁の魚のような派手な体色はしていませんが、タナゴ類の婚姻色も清涼感がありとても美しいと思います!

 ぜひ、水辺の自然エリアに立ち寄って、直接、婚姻色や産卵行動を観察してみてください。

写真上:アカヒレタビラのオス(右)、婚姻色と吻端の追星が見られる
写真中:アカヒレタビラのメス(右)、産卵管を出している
写真下:鉢植えの中の二枚貝

〔葛西臨海水族園飼育展示係 齋藤祐輔〕

(2014年06月27日)



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