雨が多い季節になりました。この時期は食べ物を冷蔵庫から出して置きっぱなしにしたりすると、微生物が大量に繁殖して傷んでしまうことも多くなります。この食べ物の変化は、味噌やお酒、ヨーグルトなど人間にとって役に立つものを「発酵」、そうでないものを「腐敗」と呼ぶようです。水族園でもこの「変化」に関するちょっとした事件がありました。
葛西臨海水族園では2014年2月6日から世界の海エリアの「深海の生物3」水槽でノコギリザメを展示しています。
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「初登場!ノコギリザメの展示」(2014年02月14日)
先日、この水槽の裏でほのかに悪臭が漂っていました。見てみると、前日に担当した職員がノコギリザメに与えた餌の残りを容器に入れて置き忘れていったようです。「まったく!」と思いつつ容器の中身を捨てようと手にとって見ると、中に入っていたイカやイワシの表面が青く光っているように見えます。見間違いかとも思いましたが、暗幕で囲っている水槽裏の暗さに目が慣れてくると、ハッキリと光っているのがわかりました。
【発光する餌の動画】
この現象は、イカやイワシの体表で発光バクテリアが大量に増殖し、そのバクテリアが発する光が見えているものです。発光バクテリアは海水中に普通に存在していて、とくにイカの体表には良く生息しているらしいのです。鮮魚店で購入したイカの刺身が、暗いところで見たら青白く光っていた!なんて話もあるそうです。
発光バクテリアというと、世界の海エリアの「セレベス海」水槽で展示しているヒカリキンメダイが思い浮かびます。この魚は眼の下にある発光器に発光バクテリアが共生していて、水槽の中でも青緑色に光るのが観察できます。今回の発光バクテリアをヒカリキンメダイに食べさせたらもっと強く光るかも?なんてチラッと思ったりもしましたが、だんだんと強い悪臭を放つようになってきたので、生ごみとして処分しました。
写真上:水槽の裏に置いてあった容器
写真下:イカやイワシの表面が青く光っている
〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕
(2014年06月13日)