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おとなしすぎる?ネコザメの食事
 └─2014/01/11

 サメといえば、映画「ジョーズ」でのシーンのように、時には人をも襲う凶暴なイメージをもつ方もおられるでしょう。しかしこのような危険なサメはほんの一部で、大半は人に対して無害でおとなしい種類です。なかでも、特におとなしい種が今回紹介するネコザメで、葛西臨海水族園東京の海エリア「渚の生物」水槽で展示しています。このおとなしい性質からでしょうか、ネコザメへの餌やりが一筋縄にはいきません。

 この水槽には、表層付近にマダイ、メジナ、カゴカキダイなど、俊敏に泳ぐ魚がたくさんおり、普通に上から餌を与えるのではこれらの種が真っ先に食べてしまいます。底付近でじっとしていることの多いネコザメには到底餌は届きません。そこで、水底の魚に効果的に餌を与える装置「くす玉」を試しました。

「優れモノの餌やり器、通称『くす玉』」(2013年09月13日)

 まず、ネコザメの近く50センチほどのところへ慎重にくす玉を落とし、中から餌のアジや甘エビを出しました。運よくネコザメの頭部方向へ餌がゆっくり近づきましたが、その距離わずか10センチほどでもネコザメは気付きません。その後ネコザメの頭上にアジ1尾が「ふわっ」と優しく乗りました。「よしっ、食べるぞ!」と思った瞬間、なんと体をくるりと反転させ慌てたように逃げ去りました。目の前の餌も視覚で認識できず、異物が触れたと思い驚いて逃げたようです。ネコザメは「おとなしすぎる」のでしょうか?

 後日、それならば匂いでと思い、匂いがよくわかるように切り身にしたアジを用意してこれを「くす玉」に入れ、ネコザメ近くに吊るしました。すると、じっとしていたネコザメですが、20秒ほどで頭を左右に小刻みに振るなどソワソワとしだしたので、このタイミングでアジを落としたところ、なんとか食べてくれました。

 自然の海でネコザメは、おもに夜間に貝類や甲殻類など比較的動きの遅いものを食べているようです。そのため、嗅覚などおもに視覚以外の感覚を用いているようです。これが水槽内で「おとなしすぎる?」行動に見えたのです。

 現在、毎日1回このくす玉で餌やりをしていますが、相変わらずの行動で、時には餌を食べ損なう日もあります。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 田辺信吾〕

(2014年01月11日)



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