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ヘビみたいなクモみたいな貝
 └─2013/02/08

 葛西臨海水族園の「しおだまり」は、海の生物に触ることのできる水槽ですが、生物を間近で見ることで体のつくりやくらしぶりを観察することもできます。今回は、じっくりと見ていただきたい生物のひとつ「オオヘビガイ」を紹介します。

 オオヘビガイは、北海道南部から九州にかけて分布し、干潮のときに干上がってしまうような浅い場所で、岩にしっかりとくっついてくらしています。直径5センチくらいの大きさです。 

 「貝」と聞いて多くの方がすぐに思いつくのは、アサリやサザエでしょうか。アサリは2枚の合わさった殻をもつ二枚貝のなかまで、サザエはくるくるとうずを巻いた形の殻をもつ巻き貝のなかまです。では、オオヘビガイはどうでしょう?

 細長い殻が、ヘビがとぐろを巻いているような形をしているため巻き貝のなかまであることはわかりますが、その巻き方は、ほかの多くの巻き貝とは大きく異なります。サザエのようにくるくるとラセンを描くように巻いているのではなく、どちらかというと不規則な巻き方をしていて、同じ形のものはありません。でもまったく規則性がないわけではなく、真上から見ると殻が開いている方に向かって反時計回りに巻いているものがけっこういます。本来は左巻きをした巻き貝なのです。

 餌の取り方にも特徴があります。直径が1.5センチほどの殻の入口からクモの糸のような粘液を周りの岩に張り出します。海水には小さなプランクトンや生物が細かくばらばらになった有機物がたくさん漂っているので、これらの細かい餌が粘液の糸にくっつくと、糸を殻の中にたぐり寄せて食べています。餌となる細かなものが豊富に含まれる海の中で、動き回らずに餌をとらえるくふうの1つです。

 水槽でも、オオヘビガイが張り出した糸に、細かな餌が付いていることがありますので、そのようすをよく観察してみてください。

 オオヘビガイは、「しおだまり」の向かって一番右側の水槽にいます。ほかにイソギンチャクやケヤリムシ、フジツボのなかまなど、同じように動き回らない生活をしている生物もいます。いずれこれらの生物のくらしぶりもご紹介したいと思います。

写真上:オオヘビガイの巻き方
写真中:サザエの巻き方
写真下:餌を取るための粘液の糸を出すオオヘビガイ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 金原功〕

(2013年02月08日)



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