葛西臨海水族園世界の海コーナーの「グレートバリアリーフ」水槽では、暖かいサンゴ礁のいろいろな生き物たちが見られますが、その中でベラのなかまとして「ギチベラ」を展示しています。
ギチベラは、奄美大島以南、インド・太平洋域に分布し、浅いサンゴ礁や岩礁などでくらしています。アゴの部分が大きく、口を前の方へ長く突き出すことができます。餌を食べるときは、この特徴的な口を使って、サンゴの中にすんでいるエビやカニなどの甲殻類、小さな魚を一瞬の早業で吸い込むようにして捕食します。
水槽の中にいるギチベラを見ると、ふだんは体の色がこげ茶色、背中の部分は明るいオレンジ色、頭部はおしろいを塗ったような白い色と、色鮮やかな装いをしています。
ところが食事の時間になると、それまでにはなかった変化が見られることがあります。餌を求めてほかの魚と競うように水面近くに寄ってくたギチベラは、次第に体がジワジワと黒くなり始め、数秒後には全体的に灰色がかった暗い体色に変わります。色の移り変わりを見ていないと、別の種類の魚と間違えても不思議ではないくらいです。
水族園のマグロたちを見ても、食事のときには興奮して、ふだんでは見られない縞模様が体に現れることがありますが、ギチベラの体色変化も同じ現象なのかもしれません。ギチベラの場合食事の時間以外でも、水槽の上に飼育係が近づいたときに体の色を変えることがあります。
みなさんも水槽の前でしばらく待っていると、その変化を見ることができるのではないかと思います。
写真:鮮やかな体色のギチベラ
〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕
(2013年01月18日)
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