学校で「植物の光合成」を習ったことを覚えていらっしゃる方も多いと思います。植物は、日光があたると葉で光合成をして栄養分を作り出します。
今回は、動物なのに植物のように光を浴びて成長する生き物を紹介します。それは葛西臨海水族園「東京の海」エリアの「伊豆七島の海3」水槽にいる「サンゴイソギンチャク」です。本当の意味での光合成ではありませんが、植物のように太陽の光を浴びて栄養分を作っています。
サンゴイソギンチャクは、暖かい海の岩礁域で見られるイソギンチャクのなかまです。サンゴイソギンチャクを光が十分に当たらないところに置くと、しだいに小さくなって弱ってしまいます。もちろんほかのイソギンチャク同様、触手で小魚やエビなど小さな生き物を捕まえて食べていますが、日光をしっかり当ててやらないと、いくら餌を与えても弱ってしまうため、かなり日光に頼って生きていると思われます。
このイソギンチャクが光を浴びて成長する秘密は微細な藻類です。一般に植物の光合成は葉などにある葉緑体でおこなわれますが、サンゴイソギンチャクでは「褐虫藻」と呼ばれる微細な藻類が、サンゴイソギンチャクの体内で栄養分を作り出しています。サンゴイソギンチャクの触手が茶色っぽく見えるのはこの「褐虫藻」の色です。
動物なのに植物のように光を浴びて成長するとなると、動物なのか植物なのか分からなくなりそうですが、これはサンゴのなかまなどで見られる現象で、その多くは太陽がさんさんと降り注ぐ熱帯域の浅い海に生息しています。水族園でも、光を浴びて成長する生き物をたくさん展示していますので、探してみてください。ヒントは「褐色」。明るい水槽で薄茶色っぽい色のサンゴやソフトコーラルなどを見つけたら、それはきっと光を「糧」に生きています。「世界の海」エリアの「グレートバリア」水槽や「インド洋」水槽を観察してみましょう。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 浅野晃良〕
(2012年09月21日)
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