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ヒザラガイは硬くてやわらかい?
 └─2012/05/11

 葛西臨海水族園の「しおだまり」は、海の生物を間近で見たり指でさわったり、楽しみながら生物をじっくりと観察できる水槽です。その「しおだまり」が2012年3月にリニューアルオープンしました。今までよりもたくさんの生物が観察できるようになったほか、その生物の生活場所がわかるような岩を設置しました。生物本来の動きもわかりやすくなりましたので、そのじょうずな観察のしかたを連載でご紹介いたします。なお、「しおだまり」で生物をさわるときは「1本指のルール(1本の指でやさしくさわる)」をお忘れなく。

 今回はヒザラガイです。ヒザラガイは、北海道南部より南の岩場の海岸に分布し、とくに本州の磯ではもっとも普通に見られる生物の1つです。潮が引いたとき、岩のすきまやくぼみにいくつも集まってくっついているため、磯の観察会ではおなじみの種類です。

 まずは、水槽でヒザラガイが岩にくっついているようすをよく見てみましょう。からだは平べったく、小判のような楕円形をしていますが、くぼんだ岩の形にあわせてさまざまに変形させています。一見やわらかそうにも見えますが、指先でそっとさわってみると背中側は硬くて岩にしっかりと張りついていることがわかります。ヒザラガイのくらしている磯は、強い波が打ちつける場所です。平べったいからだの形と岩のくぼみにぴったり張りつくことで、波の強い衝撃を和らげることができ、はがされずにすんでいます。

 さらにからだのつくりを見てみましょう。「カイ」と名前がついているように、貝のなかま(軟体動物)で、やわらかなからだに硬い殻をもっています。その殻は、アサリのように2枚合わさったものではなく、サザエのようにうずを巻いたものでもありません。そっとなでてみると、8枚の殻が重なり合って並んでいるのがわかります。まさに鎧のように分割された部品がうまくかみ合わさっているため、さまざまな岩の形に合わせてからだを変形させることができるのです。

 殻の外側の部分にもふれてみるとザラザラしています。ここには鱗片(りんぺん)と呼ばれる、とても小さな硬い組織が密に生えています。ヒザラガイの種類によっては、棘や毛が生えているなどの特徴があり、さわりごこちが違います。海でいくつかの種類を見つけて、さわって比べてみてください。ただし、さわりすぎると組織がとれてハゲてしまいますので気をつけましょう。

 ヒザラガイにはもうひとつ硬いものがあります。それは「歯」です。ヒザラガイは潮が満ちて水中に入ったときに這いまわり、岩の表面に生えている藻を歯舌(しぜつ)と呼ばれる硬い歯で削り取って食べています。標本がありますので、お申し出いただければ「しおだまり」のスポットガイドの時間や情報資料室でご覧になれます。この歯には磁鉄鉱(じてっこう)と呼ばれる鉄の成分が含まれているため磁石にくっつきます。ぜひ、手にとって確かめてみてください。

・東京ズーネットBB動画「しおだまり水槽リニューアル」(2012年04月25日)

写真上:平らな板の上のヒザラガイ
写真下:くぼんだ岩の形にからだをあわせたヒザラガイ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 金原功〕

(2012年05月11日)



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