ニュース
「ままかり」登場
 └─2012/04/20

 「ままかり」という名前は東日本では馴染みが薄いでしょうが、西日本の瀬戸内沿岸、とくに岡山県ではとても有名な魚の名前です。この魚の内臓を取り出し、軽く塩漬けにして酢でしめたものは絶品で、「家のご飯を食べ尽くして、近所へご飯を借りに行くほどおいしい」ということから、この地方ではこの魚のことを「飯借り(ままかり)」と呼びます。

 これは、ニシン目ニシン科の小型の魚で、全国共通の標準和名は「サッパ」といい、日本各地の沿岸に分布しています。大都市に隣接する東京湾の最奥部にも分布することから、このたび葛西臨海水族園「東京の海」エリアの「運河」水槽で展示を始めました。

 水族園では、すぐ目の前の葛西海浜公園「西なぎさ」で、毎月1回小型地曳網による生物調査を長年おこなっています。昨年(2011年)の特徴の一つとして、夏から秋にかけてサッパが比較的多く見られました。このサッパは、おそらく春から夏にかけてこの付近で生まれたものでしょう。真夏の8月には、まだ全長2センチ足らずで、親とはほど遠い半透明で細長い体でしたが、秋も深まり11月になると全長5〜6センチまで成長し、親とほぼ同じ形になりました。この11月の調査時に数十匹を水族園に持ち帰り、まずはバックヤードの水槽で飼育を始めました。

 そして約5か月後、しっかりと餌付き、体も大きくなったので、ようやく「運河」水槽にデビューです。

 神経質な魚なので、周囲のちょっとした刺激で壁やアクリルにぶつからないか心配しましたが、1〜2日で水槽に慣れ、壁を認識し、落ち着いて泳ぎはじめたので、まずはホっとしています。

 ちなみに、同じエリアの「東京湾の漁業」水槽には「江戸前のこはだ」こと「コノシロ」が展示されています。「瀬戸内のままかり」こと「サッパ」とは比較的近い種(同じニシンのなかま)どうしです。東西旨いもの対決、まずは見た目でその違いを比較してみてはいかがでしょうか?

写真上:8月に採集したサッパ(全長1.8センチ)
    体色が白いのはホルマリン溶液で固定したため
写真下:11月に採集したサッパ(全長5.8センチ)

〔葛西臨海水族園飼育展示係 田辺信吾〕

(2012年04月20日)



ページトップへ