今回の調査の発端は、伊豆半島のダイビングでテヅルモヅルのなかまが見られるという情報が入ったことからでした。
テヅルモヅルは一見すると植物のツルが絡まりあっているようで動物には見えませんが、ヒトデのなかまです。よく見ると真中に盤があり、そこから5つの腕が出て、いくつにも枝分かれしています。テヅルモヅルはこの腕を広げ、海中に漂うプランクトンを捕らえて餌にしています。
これまで葛西臨海水族園では自然の状態でのテヅルモヅルが海の中のどんな場所にどのような状態でいるのかという情報がほとんど得られなかったので、今回実際に調査することにしました。
事前の情報ではテヅルモヅルがいる場所は水深3〜10メートルととても浅く、しかも限られたポイントで見られるということでした。
ダイビングの装備を整え、船で移動しいざ調査開始です。海底からそびえたつ大きな岩の隙間や窪みなどを、水中ライトで照らしながらテヅルモヅルを探します。調査中、岩の窪みにいる多数のウミシダは、まるで植物がはえているように見え、穴の中ではサラサエビが、岩の隙間ではトゲアシガニがこちらをうかがっていました。
肝心のテヅルモヅルは岩の窪みの奥深くで発見されました。ライトを当てて見てみても腕が絡まりあっている部分しか見えず、最初はカイメンかと見過ごすところでした。
取り出してみようと指や細い棒でつついてみると、ぞわぞわ〜っと腕を広げて絡みついてきました。乱暴に引っ張り出すと細い部分が折れてしまうので、慎重に慎重に穴から取りだしました。取り出したテヅルモヅルは「セノテヅルモヅル」という種類で、最初は盛んに腕を動かしていましたが、やがて枝分かれした腕を丸めてしまいました。
今回の調査で発見したすべてのセノテヅルモヅルは、岩の窪みの奥深くに隠れて縮まっていたので、夜に動き出すのかと思いましたが、ガイドをしてくれたダイバーの方によると、昼間でも穴から出てきて腕をいっぱいに広げていることがあるそうです。
葛西臨海水族園ではこれまで深いところからしか採集したことがなかったので、「深海の生物」コーナーで展示しています。いつも展示水槽の壁の上のほうにくっついています。この不思議な生き物、テヅルモヅルを見にいらっしゃいませんか?
写真上:調査風景
写真中:セノテヅルモヅル発見!
写真下:穴から取り出したセノテヅルモヅル
〔葛西臨海水族園調査係 小味亮介〕
(2012年01月06日)
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