「続・新たな視点で見てみると」(29)(33)(34)(35)(36)と続けて葛西臨海水族園のすぐ側にある人工干潟「東なぎさ」で撮影した映像をご紹介したシリーズも、今回でひとまず終了です。
干潟の上で食事をしていた大きめのヤマトオサガニを撮影していたところ、小さなヤマトオサガニが近づいてきました。ヤマトオサガニのおもな餌は干潟の表面に生える微小な藻類といわれていて、ハサミ脚で干潟表面の泥をちょっとずつ口に運びます。
近づいてきた小さなカニは、そのまま大きなカニの脚や背中をチュクチュクとつつき始めました。そのようすは、ちょうどサルのグルーミング(いわゆるノミ取り行動。餌の確保や体を清潔にすることよりも、群れの中での個体関係を調整する役割があるといわれています)のようで、ヤマトオサガニにも「社会的な群れ」や「その中での個体関係」があるのでは?と感じさせる行動でした。
【ヤマトオサガニのグルーミング!? 動画】
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前回の「続・新たな視点で見てみると(36)ヤマトオサガニの背中を流れる水」を思い出してください。
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「続・新たな視点で見てみると(36)──ヤマトオサガニの背中を流れる水」
ヤマトオサガニの背中には呼吸のために水がよく流れています。この水のおかげで背中の凹凸や脚に生えている毛には、餌となる微少な藻類が意外に多く付いているのかもしれません。小さなカニはこの藻を食べていたのでしょうか? しかし、背中をチュクチュクされているカニが意図的にやらせているようにも見えて謎は残ります。
※「東なぎさ」は生物保護のため、ふだんは人の立ち入りが禁止されています。
写真:大きなカニの体から餌をとる?小さなカニ
〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕
(2011年12月09日)