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水族園に「トド」現る!
 └─2011/09/30

 ブリやスズキ、ボラなど、成長に伴って名前が変わる魚のことを「出世魚」と呼びます。出世魚の呼び名は地方によって多少異なりますが、ボラの場合、関東では「オボコ」→「イナッコ」→「スバシリ」→「イナ」→「ボラ」→「トド」と大きさによって変化します。一方、標準和名の「ボラ」は、国内では学名の代わりに用いられる名称で、大きさや地方によって変わることはありません。
 タイトルの「トド」は、じつはオットセイやアシカのなかまのトドではなく、ボラのことです。

 先日、葛西臨海水族園の「渚の生物」水槽に全長約60センチメートルのボラが登場しました。ひとまわりかふたまわり小型のボラに交じって、水面近くを悠々と泳ぐ姿が見られます。
 出世魚の呼び名については何センチ以上を何と呼ぶというはっきりした決まりがあるわけではありませんが、ボラの場合おおよそ50センチメートル以上を「トド」というそうです。ボラは大きくなると90センチにもなるので、今回お目見えしたボラはトドになりたてで、周りにいるひとまわり小さなボラたちはいってみればボラのボラというところでしょうか。

 さて、「とどのつまり」という言葉がありますが、「結局」とか「行きつくところ」などを意味する言葉として使われます。これは、ボラの「トド」がこれ以上大きくならないことからいわれるようになったそうです。また、「イナ」が男気のある元気な若者を指す「いなせ」、「オボコ」が子どもや幼いようすを指す「おぼこい」の語源になったという説があります。このように、ボラは昔から私たちの生活に身近な存在だったのですね。

 水族園では「渚の生物」水槽のほかにもボラを展示しています。観察していると、「アマモ場」の水槽では、ボラが頭を左右に振りながらアマモの葉の表面をなめるようにしている行動が見られます。海藻の表面についている小さな藻類を歯で刈り取り集めて食べているのです。また、「運河」の水槽では底の砂に口を突っ込んで砂を口に含み、もぐもぐと動かしながら微生物や藻類などを食べ、残った砂を口からぱっと吐き出しています。これらはボラに特徴的な餌の食べ方です。ユニークな食事風景をぜひ見に来てください。
 ボラを観察しながら、出世していく名前のどれに当たるか想像してみるのも面白いかも知れません。

写真:「トド」になった「ボラ」

〔葛西臨海水族園飼育展示係 浅野晃良〕

(2011年09月30日)



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