葛西臨海水族園でマタナゴの子どもが生まれました。マタナゴといっても、淡水にすむタナゴのなかまではありません。最近までウミタナゴという名で呼ばれていた魚です。そのうち、青みがかった体色のものをウミタナゴの新亜種
「マタナゴ」として区別するようになりました(記載は2007年)。
マタナゴは関東沿岸から瀬戸内海に分布し、砂地や岩場に生息しています。主にエビやゴカイなど、小型の底生動物を食べ、大きくなると体長25センチメートルほどになります。
さて、最初に「子ども」が生まれたと書きましたが、ウミタナゴのなかまは、ほかの多くの魚と異なり、卵ではなく子どもを産みます。メスが一度に産む子どもの数は10~20尾ほどですが、大きなメスでは40尾以上産むものもいます。生まれたばかりの子どもの大きさは5センチメートルほどです。親とほとんど同じ姿をしており、生まれるとすぐに泳ぎ出し餌も食べ始めます。
今回、マタナゴの子どもたちを「アマモ場」水槽で新たに展示しました。アマモは波の穏やかな浅瀬に生える海草で、このアマモが生い茂るような場所をアマモ場といいます。アマモ場は、波や水の流れをやわらげる働きがあり、隠れる場所も多く食べ物も豊富です。そのため、産卵場所や幼いころの生活場所として、多くの生き物が利用しています。
春から初夏にかけて、ウミタナゴのなかまも出産のためにアマモ場などの藻場にやってきます。子どもたちは幼い時期をそこで過ごし、成長すると沖合へと移動します。そして繁殖の時期になると、再び藻場にもどってくるのです。マタナゴの子どもたちがアマモの間に見えかくれしているようすをごらんください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 戸村奈実子〕
(2011年08月05日)
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