今回ご紹介するのは深海のかわいらしいカニ(?)「イガグリガニ」です。その名のとおり、全身に棘が生えていて「いが栗」のようです。カニという名前がついていてその姿もカニらしい形ですが、よく見ると歩脚が3対しかなくて、じつはカニではなくヤドカリのなかまで、タラバガニ科に属します(カニのなかまは歩脚が4対です)。ちなみにみなさんがよくご存じのタラバガニも、じつはヤドカリのなかまです。
房総半島から九州にかけての太平洋側と九州西岸の水深150~600メートルに分布しています。葛西臨海水族園で展示しているものは甲幅7センチメートル足らずの小型ですが、甲幅が15センチメートル以上で重さが1キログラムを超えるほど大きくなります。
初めて展示水槽に入れたときは、大きな魚が泳いでいるためか隅のほうに隠れがちでしたが、最近は慣れてきたようで、中央付近の石の上に平気で登るようになりました。
同じ甲殻類のアカザエビが穴を掘って体の後半部分を隠し、長い鋏(鋏脚)を威嚇するように振り続けているのとは好対照です。
深海にも多くの外敵がいると考えられますが、立派な「とげとげ」のおかげなのか魚たちも襲ってくる気配はありません。
このカニでないカニは、水族園深海の生物コーナーの「深海の生物4」水槽でごらんになれます。深海なので照明を少し暗くしてありますが、目を凝らして探してみてください。
写真:岩にのっているイガグリガニ、下で鋏を広げるアカザエビ、右に見えるのはフトザオウニ
〔葛西臨海水族園飼育展示係 江川紳一郎〕
(2011年07月01日)
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