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干上がっても卵を守る、都会向きの魚?
 └─2011/06/17

 2011年6月3日に葛西臨海水族園のすぐ近くにある三日月干潟へ生物の調査に出かけました。

 今回はマガキがたくさん集まったところで見られる魚類2種、トサカギンポとイダテンギンポを紹介しましょう。いずれも東京湾奥のように内湾的な環境に住むイソギンポ科の魚で、探すポイントがわかればけっこう見つけられますが、探し方がわからないとなかなか見つからないという魚です。

 調査に行った干潟には鉄の支柱が立っていて、そこにはマガキがびっしりと折り重なるようにして付着していました。そんなところが彼らの生息場所です。

 マガキは死んでも、ほかの貝などが付着しているため、2枚の殻が閉じたような状態のまま残っていることが多く、その閉じた殻のわずかな隙間から入れる小さな生き物にとっては格好の隠れ家になっています。

 イダテンギンポやトサカギンポも、カキ殻を隠れ家としているのはもちろん、産卵場としても利用しています。繁殖期の初夏には、カキ殻の内側に産み付けられた卵を守るオスの姿が見られます。

 干潮になり水位が下がると、マガキは水面上に露出し、イダテンギンポやトサカギンポも水面より上で卵を守ることになってしまいます。とはいえ、殻の内側には水も残るし、カラカラに乾燥するわけではないので大丈夫なのでしょう。

 イダテンギンポもトサカギンポも同じようなところに生息しており、垂直な面にマガキが付いているところを好むようです。運河や港湾の岸壁が格好のすみかとなるわけで、水族園近くの船着き場の垂直岸壁面にもたくさん見られます。一般に、垂直護岸は、多くの生物にとってくらしにくい場所と考えられていますが、この2種に限ってはそうでもないようです。都会生活に適した魚たちだといえるかもしれません。

 葛西臨海水族園では、「東京の海」エリアの「運河」の水槽で展示しています。

写真上:マガキがびっしりと付着
写真中:オレンジ色の卵を守っているイダテンギンポ
写真下:貝殻に入っているトサカギンポ

〔葛西臨海水族園調査係 荒井寛〕

(2011年06月17日)



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