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北極の海で調査・採集を実施──10/1

 葛西臨海水族園の調査係は2004年9月、カナダのレゾリュートで北極海の生物調査と採集をおこないました。レゾリュートは北緯75度、東経95度、北極圏のまっただ中にある、人口230人のイヌイットの村です。

 この村は、飛行機の定期便航路がある空港の中でもっとも北に位置し、北極点までは2000キロメートルほどです。以前、私が訪れた南極のキングジョージ島は南緯62度ですから、レゾリュートはキングジョージ島よりもさらに奥地(極点に近い)に位置します。
 しかし、これほど北に位置しているにもかかわらず、キングジョージ島では見ることのできなかった、花をつける植物をたくさん見ることができます。このため、これらの植物を餌にするジャコウウシやホッキョクウサギ、そして、これらの草食動物を餌にするホッキョクギツネ、ホッキョクオオカミ、ホッキョクグマなどの大型肉食哺乳類までもがこの極北の地でくらすことができるのです。ちなみに、南極には陸生哺乳類はまったくいません。

 さて、今度は海中にもぐってみることにしましょう。顔を海水につける瞬間はとても勇気がいります。流氷の浮かぶ海水温はマイナス1度。一瞬、頭をかなづちで殴られたような衝撃が走り、水が直接ふれる頬や唇は痛みを覚えた後で感覚がなくなります。
 海底の泥を巻きあげないようにゆっくりと泳ぎだすと、海底には多くの生物を見ることができます。桃色や白色のソフトコーラル、真っ赤なナマコのなかま、海底をうめつくすクモヒトデ、それらのかげで身をひそめるカジカのなかま。海中は意外なほど色あざやかな生物にみちています。

 葛西臨海水族園では、南極の生物と北極の生物がとなりあった水槽で展示されており、それらの生物を比較しながら観察することができます。両極の生物を間近に見られる水族館はほかにはありません。

写真上から:
・湾の奥に位置する人口230人のレゾリュート村
・北極の岩だらけの大地にポツンと黄色い花が咲いていた
・水温はマイナス1度。北極でのダイビングには流氷やホッキョクグマなどの危険がつきまとう
・トサカノリにとまるヨコエビのなかま、体長約15ミリメートル
・触手をひろげるナマコのなかま Psolus sp.

〔東京動物園協会調査係 松山俊樹〕

(2004年10月01日)



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