ニュース
暗やみの中のともし火、ヒカリキンメダイの展示
 └─2011/04/15

 海の中には、発光物質を体の外に出したり、また体の一部分を光らせたりすることができる生き物たちがいます。 葛西臨海水族園実験展示コーナーでは、発光液を出しながら、水中に幻想的な青白い光線を描くウミホタルを展示しています。また世界の海「セレベス海」の水槽では、発光魚のヒカリキンメダイを見ることができます。

 ヒカリキンメダイは、おもに南太平洋の島々の暖かい海にくらし、眼の下には半月形の大きな発光器があります。そして発光器の中にすんでいる発光細菌の働きにより、その部分が青緑色に光ります。ヒカリキンメダイは、同じく発光器を持っているマツカサウオとともに人気があり、水族館でよく飼育・展示されている魚です。

 発光器の裏面は黒く、発光器をクルクルと反転させることで、光を出したり消したりすることができます。 ヒカリキンメダイはとても臆病な魚で、水槽を光で照らすと驚いて一箇所に密集してしまい、発光のようすをよく観察できなくなります。そのため水族園では、アクリルガラス面に遮光パネルを取り付けて、魚が驚かないようにくふうしています。 ヒカリキンメダイが発光する理由は、仲間とのコミュニケーション、外敵を惑わす、餌を見やすくするなどの理由が考えられています。水槽の中に餌を入れると、発光器が見える時間が少し長くなるようなので、サーチライトのように使っているのかもしれません。

 生物の発する光は「冷光」と呼ばれ、熱を外に出さないため、エネルギー効率がとてもよい光とされています。ふだんのくらしの中で節電が求められる今日この頃ですが、ヒカリキンメダイたちは暗い水槽の中で、わずかな光を有効に利用しながら、上手な省エネ生活をしているのかもしれません。

写真上:眼の下にある発光器
写真下:ヒカリキンメダイの発光をスローシャッターで撮影、光が筋状に見える

〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

(2011年04月15日)



ページトップへ