ニュース
生きた化石、トリノアシ
 └─2011/03/11

 「生きた化石」という言葉を耳にしたことがあると思います。太古の昔に死んで化石になった恐竜が現代に生き返って動き出す、そんな映画のようなものではありません。

 この言葉はチャールズ・ダーウィンが『種の起原』の中で初めて使ったといわれており、今日では、地質時代から現在までその特徴を大きく変えずにもち続けている生き物を指します。今回はそんな生きた化石と呼ばれる生き物の中で、葛西臨海水族園の目の前に広がる東京湾に棲んでいる「トリノアシ」をご紹介します。

 さて、なんともヘンテコリンな名前ですが、見た目がたしかに「鳥の足」に似ていますね。このトリノアシは、ウニやヒトデと同じ棘皮動物のなかまで、約5億年前に海に現れたといわれています。現れた当時は浅い海で繁栄していたのですが、周りに多くの生き物が現れると生存競争に負けて、どんどん海の深い方へと追いやられてしまいました。そして現在では、深海で細々とくらしています。しかし、トリノアシには、驚くべき能力が秘められていたのです。

 トリノアシの体は、大輪の花のように見える冠部と細長い茎部から成っており、生命を司る重要な器官は全て冠部に集まっています。もし、体の重要な部分が敵に攻撃されて取れてしまったら、そのまま死んでしまうと思いませんか?

 しかし、冠部が取れてしまったトリノアシを予備水槽で飼育し続けたところ、なんと小さな冠部が現れているのを発見しました。それを見たときには、感動してトリハダが立ちました。これは、トリノアシが浅い海に棲んでいたころ、外敵に冠部を食べられても生き残るために手にいれた、驚くべき再生能力だといわれています。

 この再生中のトリノアシは、冠部がもう少し大きくなるまで、裏の予備水槽で飼育を続けますが、ほかの個体は深海コーナーの「深海?」水槽で展示しています。

 さて、2011年3月12日(土)午後3時から、アメケンこと私、雨宮健太郎がスタッフトークをおこないます。その中で、この再生したトリノアシを会場のみなさんに特別にごらんいただきます。水族園のご近所の方はこれを読んでからでも間に合いますので、お待ちしております! 遠方の方はごめんなさい。

3/12 スタッフトークのお知らせ

写真上:鳥の足にそっくりな(?)トリノアシ
写真下:きれいに再生した冠部

〔葛西臨海水族園飼育展示係 雨宮健太郎〕

(2011年03月11日)



ページトップへ