葛西臨海水族園では、フンボルトペンギンが産卵しています。本格的な冬になろうとしているこの時期に、産卵するのはおかしいのではないかと思われる方もいるかもしれません。
野生のフンボルトペンギンが住んでいる場所は、ペルーからチリにかけての太平洋沿岸です。日本と反対側の南半球なので、現地では初夏の時期に当たる今、日本にいるフンボルトペンギンたちも繁殖を開始するのです。
ところで、葛西臨海水族園では繁殖開始時期が数年前から次第に遅れ始めて、2009年度は年を越した2月末になりようやく産卵を始めました。飼育下では、このように大きく繁殖時期が変わることは珍しくありません。
もともと野生の生息地でもコロニーによる時期のズレがあり、全体では夏の暑い時期を除き、ほとんどの時期で繁殖活動が見られます。
しかしながら、おもな繁殖時期は9~12月と4~7月といわれ、以前水族園でもそれと似た時期つまり10月から産卵し始め11月と3月に産卵のピークが見られました。
繁殖開始時期が遅くなると、日本では繁殖期後半に夏の厳しい気候をむかえ、繁殖活動やその後の換羽に大きな生理的ストレスが加わります。そこで、昨年度の繁殖期には、繁殖を調整しました。
水族園では、近親交配が進むのを避けるため大多数のつがいに繁殖制限をしています。具体的には最初の産卵後に卵を擬卵に取り替え、擬卵を50日目に回収して抱卵が失敗したことにするのですが、これらのつがいは繁殖期内に数回産卵を繰り返します。そこで、昨年度は擬卵に取り替えた後、親鳥が抱卵を放棄するまでそのままにして、次の産卵をしないようにしました。
それでも、換羽は8月の猛暑のさなかとなってしまいましたが、今年度の繁殖開始は、リセットされたように11月6日から産卵が始まりました。11月の産卵は2007年以来です。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 福田道雄〕
(2010年12月17日)
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