葛西臨海水族園では2010年10月27日の休園日を利用して、関東電気保安協会の協力の下、電気設備の自主点検をおこないました。
水族園は、照明やパソコンなどをはじめ、水槽の循環ポンプやヒーター、クーラーなど、ほとんどすべての場所で電気を使用しています。そんな電気に頼りっぱなしの状態の中で、設備に異常が発生したら……。災害が起きて電気が来なくなってしまったら……。
そのような最悪の事態を避けるために、毎年電気設備の自主点検をおこなっています。約半日のあいだ、すべての電気を止める必要があり、この日は私たち飼育係にとって「全停電訓練の日」でもあるのです。
さて実際に電気が止まると水族園はどうなるのでしょうか。
すべての電気設備は作動しなくなり、水槽を含めて館内は真っ暗になります。もし開園日にこのようなことが起きた場合はお客様の安全確保が最優先なので、水族園には非常用の自家発電機があり、最低限の照明と一部の設備はすぐに復帰するようになっています。
でも今回は休園日の訓練でしたので、電気がない状態での生き物や水槽のようすを中心に紹介します。
部屋の照明が消えても私たち職員は心の準備をしているので「あ、消えたな」と思うだけで済みます。しかし水槽内の生き物たちはそんなことを知りません。
クロマグロのように明るさの変化に敏感な魚は、突然照明が消えるとびっくりして壁に激突してしまうかもしれません。そのような生き物がいる水槽は、あらかじめ徐々に照明を消しておいたり、電池式の非常用照明を設置するなどして対処します。
また、深海や極地などの冷たい水槽は、外気の影響を受けて水温がどんどん上がってしまいます。こうした水槽には、海水で作った氷を浮かべて水温を調整します。
そのほかにも、ほとんどの水槽は循環ポンプが動いているときの「絶妙なバランス」で水位が保たれているので、停電になると干あがってしまうことがあります。
電気が止まっている間、私たちは生き物や水槽に異常がないか確認して回りました。無事に設備点検を終え電気が復活すると、弱ってしまった生き物がいないか、バランスが崩れてしまった水槽がないか確認します。そして異常がないことがわかると、ようやくひと安心できます。
停電訓練をおこなうたびに、ふだん自分たちがいかに電気に頼っているのかがよくわかります。年に一度、点検と訓練をおこない、もしものときも迅速に対応できるよう心がけています。
写真:真ん中の白いものは海水でできた氷。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 中沢純一〕
(2010年10月29日)
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